<「ミャンマー民主化の星」は虚像なのでしょうか>
アウンサンスーチー氏

Aung San Suu Kyi 氏

ミャンマーがロヒンギャ問題で国際的な非難を浴びる中、マララ・ユスフザイMalala Yousafzai 氏をはじめ世界の非難の矛先が、ミャンマー政府からスーチー氏に移ってきています。

ミャンマーのラカイン地方に住む ロヒンギャRohingya people は、人口およそ100万から200万人と言われる イスラム教徒=ムスリムMuslim です。
ミャンマーは仏教国であるため、ムスリムであるロヒンギャは、ミャンマー政府だけでなく一般のミャンマー国民からも迫害を受けており、現在はミャンマー国籍すらも与えられず、他国に受け入れてもらうことも困難な、厳しい立場に置かれています。
二年前にはロヒンギャの一部が海上経由で亡命を試みる過程で、劣悪な環境に置かれ、死亡する者も多数出ている惨状が世界に報道され、国際的な注目がロヒンギャに集まる一方、迫害を続けるミャンマー政府に加え、ミャンマー民主化の象徴で、政府の実質的なリーダーでもある アウンサンスーチーAung San Suu Kyi 
の責任を問う声が国際社会で次第に強まってきています。

(以上 HEADLINE 2017.09.27)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.27)【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>


『ココがヘン!ニッポンのニュース:ようやく語られ出した「ロヒンギャ問題」にも報道内容に偏り

<参考:東洋経済オンラインロヒンギャ問題、スーチー氏批判は筋違いだ

「ロヒンギャ問題」には思い入れがある。
別に自慢でも何でもないけど、「ほぼナイ!」の第一回目のメインテーマが、この「ロヒンギャ問題」だった。
当時、CNNやBBCはじめ、海外メディアがこの問題を連日大きく取り上げる中、日本のメディアはほとんどスルー。
あれだけ悲惨な状況を、他国の出来事とはいえ、当然のようにスルーできる日本のメディアは異常だ、と憤ったのが、「ほぼナイ!」を立ち上げた理由の一つと言ってもいい。
もっとも、日本人が(アメリカ以外の)国際問題にはほとんど興味がなく、だからメディアとしては取り上げても数字(視聴率・部数)が取れないのでスルーする、という背景があるのだけど。

さて、そんな「ロヒンギャ問題」、日本ではめったに使わないけど、特定の民族を強烈に迫害し、完全に亡き者にしようとする行為は、民族浄化(エスニック・クレンジング)Ethnic Cleansing と呼ばれ、国際社会の激しい非難を浴びることになる。
「ロヒンギャ問題」の実態が広く国際社会に知られることになった二年前も、この Ethnic Cleansing というコトバが海外メディアで飛び交った。

あれから二年、ロヒンギャの状況は一向に改善の兆しを見せず、それどころかむしろ悪化している。
国連の調査では、ミャンマー軍兵士によるロヒンギャ女性のレイプが数多く報告されており、ミャンマーを追われ隣国バングラディシュの難民キャンプに身を寄せるロヒンギャ女性の中には、望まない妊娠をしている方々も数多くおられ、世界のメディアがその惨状を伝えている

マララ・ユスフザイ氏

Malala Yousafzai氏

そんな中、遂に日本のメディアもこの問題を取り上げ始めたようだ。その契機になっているのが、史上最年少のノーベル平和賞受賞者 マララ・ユスフザイMalala Yousafzai 氏ら歴代のノーベル平和賞受賞者が、同じく平和賞受賞者である、スーチー氏を一斉に批判、スーチー氏に抗議の書簡を送るなど、国際社会の声が徐々にミャンマー政府批判からスーチー氏批判に移ってきたことだ。
この二年、「ロヒンギャ問題」を追い続けてきた海外メディアと違い、突如スーチー氏批判を報道する日本のメディアだけを見ていると、なんでスーチー氏が非難されているかわからないだろう。
もともと、日本はミャンマーについて関心が薄く、ミャンマーについて辛うじて知っていることと言えば、スーチー氏の存在くらい、という人も多いかもしれない。
そんな状況で、国際社会が一斉にスーチー・バッシングをはじめた、となると、ちょっと面白いネタとして日本のメディアが取り上げだしたのは、わからないでもない。
実際、日本の報道の多くはロヒンギャの惨状よりスーチー・バッシングにウエイトを置いていたりするので、かなり偏った、いびつな報道になっている印象がある。

ほぼナイ!」で取り上げた、スーチー氏のノーベル賞はく奪を訴えるネット上の署名は、世界のスーチー批判の象徴として、日本の報道でも取り上げられた。
スーチー氏批判ももっともだし、この二年、ロヒンギャについては沈黙を続け、相次ぐ海外メディアの取材に遂に反論、しかしその中身は問題の存在をほぼ完全否定するものであることに、多くの人が落胆したのも事実だ。
だが、その一方で、スーチー氏の立場はミャンマー軍に対して弱く、彼女が声を上げられない状況にあることを指摘する声もある。
ミャンマーの外にいる人々には、なかなか状況は見えずらいだけに、彼女の評価は簡単にはできない状況だ。

いずれにしても、日本のメディアもこの問題を取り上げたことで、この問題が日本国内に知られるきっかけにはなっただろう。
引き続きこの問題を多角的に捉える報道が増えていくべきだし、何より一日も早く問題が解決することを切に望む。

イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫