ついに「ジャニーズ」に公取委のメス:大手芸能事務所「圧力」の実態(2019.7.31配信分レビュー:その2)

- ほぼナイ! HEAD LINE -
<ジャニーズの「闇」はないことになっています>
故ジャニー喜多川氏

故ジャニー喜多川氏(写真:Share News Japan)

7月17日にNHKが緊急速報で「元SMAP3人のTV出演に圧力の疑い ジャニーズ事務所を注意 公正取引委」と報じました。ジャーニーズ事務所は「圧力をかけた事実はない」と否定するコメントを出しています。

ジャニー喜多川社長の死去が伝えられた7月9日から間もなくして流れたこの速報は、その後に他メディアが後追いすることはほとんどなく、速報の直後に出された、自らの圧力を否定するジャニーズ事務所の声明を伝えるのみにとどまったメディアがほとんどで、大手芸能事務所に対する各メディアの「弱腰」が改めて浮き彫りになった格好です

(以上 HEADLINE 2019.7.31)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.47):【 見逃し配信を視聴 (YouTube・part 01) 】【 見逃し配信を視聴 (YouTube・part 02) 】>

 

【ココがヘン!ニッポンのニュース】ついに「ジャニーズ」に公取委のメス:大手芸能事務所「圧力」の実態

<参考:BuzzFeed Newsジャニーズ「注意」の理由は? 公取委内部でせめぎ合う「積極派」と「消極派」

「圧力」か、「忖度」か

長年「公然の秘密」だった芸能界の闇に、ついに公取委が介入した。
公取委というのは、公正取引委員会Japan Fair Trade Commission (JFTC) の略称で、これまた略称である独禁法(独占禁止法)の運用が適切に運用されているかをチェックする機関だ。
チェックする機関、と簡単に説明しちゃったけど、この公取委、実はれっきとした内閣府の組織、つまり総理大臣の命を直々に受けて活動する、ま、要するにとっても「エラくて怖ーい」組織だ。
そんな公取委が管轄する独禁法は「経済の憲法」と言われるほど、日本の自由経済の一番のキモとされているルールなので、これを破ると結構ヤバい。
この独禁法を破る、つまり違反するのがよく耳にする、独禁法違反Antitrust Violations になるけど、これはまた後程。

そんな公取委が、なんとあの「ジャニーズ」に目をつけた。
ジャニーズ事務所といえば売れっ子のイケメン男性アイドルが軒並み所属する、芸能事務所の中でも大手中の大手。そう、それがかの有名な「ジャニーズ」。

例えば、もし仮に中小規模の事務所所属のタレントが刑事事件の容疑者になったら、連日メディアが寄ってたかって「○○容疑者」と連呼し、起訴前の段階からまるで犯罪者扱い。
これがジャニーズ所属タレントの、しかも人気グループのメンバーが逮捕でもされようものなら、メディア側の態度は一変。
なぜか勝手に気を使って、「○○メンバー」などと法律上には全く存在しない呼び名が突如出現する。
容疑がかかってすら特別扱いされる。
おまけに「○○メンバー」が「ジャニーズ」じゃなくなると、「○○元メンバー」になるかと思いきや、「ジャニーズ」の神通力が切れるのか、一般的な芸能人同様「○○容疑者」に早変わりしたりする。
そう、これがかの有名な「ジャニーズ」。

と、こんな風に書くと「ジャニーズ」が悪いみたいに思えるけど、ボクはそんなことは一言も言ってない。
今回のジャーニーズ事務所に対する注意もにしても、元SMAPの3人のテレビ出演を巡りホントに「ジャニーズ」が圧力をかけたのか、ってことが焦点になってるけど、それは当事者しかわからない。わかる筈がない。
当事者とはモチロン、「ジャニーズ」と圧力をかけられた(と公取委が言っている)各テレビ局の2者。
公取委がむやみやたらに難クセをつけることはまずないし、それなりに根拠がないと彼らは動かない。
そして誰の目にも明らかなのが、3人がSMAPと「ジャニーズ」を抜けてから、あっという間にテレビ番組から姿を消した、というコト。
しかもテレビCMにはその後も結構出ているので、単に人気がなくなった、タレントの価値が下がった、という問題じゃないのもはっきりしている。
となると、結論は2つしかない。「圧力」か、「忖度」か。
つまり「ジャニーズ」側が「3人を使ったらお宅の局に出てる”嵐”のメンバーのお腹が痛くなって出れなくなるかもしれない」的なことを局側に言ったのか(これならほぼ露骨な「圧力」)、そんなことは一切言わずにある日を境に「偶然」3人の出番がなくなったのか(これならもちろん局側の「忖度」)、そのどっちかだ、ということ。

と、あえて具体的にイロイロ書いてみたけど、実はボクはこんなのどっちでもいい、と思っている。
そもそも、一生答えが出てこないハナシだし。

メディアが腹をくくればいいだけのハナシ

ほぼナイ!」でも言った通り、ボクは「ジャニーズ」の「圧力」は一切なかったと思っている。
大体、今の「ジャニーズ」と局との力関係を見れば、「圧力」なんかかけなくても局側が勝手にビビって「忖度」して3人を干す、という判断をしたのだろうことは容易に想像できる。
そうじゃなければ、「ジャニーズ」が「圧力」をかけてない、と否定した時点で、じゃあ悪いのは誰?ってことになるので、次に当然疑われる局側は、全力で否定しなきゃおかしい。
だってこの問題、公取委が動いてる案件ですよ?つまり国が目をつけたのよ?思いっきし大問題でしょ。
ところが、そのことに当のテレビ局は一切触れず、いつものようになかった事にしようとしてるだけ。
て事は、自分たちが悪い、勝手に「忖度」しました、とゲロったようなもんでしょ。

それにそもそもこのハナシ、仮に「ジャニーズ」が「圧力」的な発言をしてきても、ハイハイ、と聞き流してテレビ局が3人を使い続けてれば、何の問題にもならなかった。
それで更に他の所属タレントを出さないと本気で芸能事務所側が脅してくるなら、その時こそ、まさに報道の力。
「それ、独禁法違反Antitrust Violations ですよね?ウチの報道で大々的に問題にしますよ。公取委も動きますよ?」
とでも言えばいいだけの話だ。
そうなった時に「ジャニーズ」に一切勝ち目はない、って、ま、以上は全部仮定の話なので、悪しからず。
要するに、最終的にどのタレントを使うかの決定権は、言うまでもなくTV局側にあるんだから、コレはあくまでもTV局、メディアの問題、ってコト。

「ジャニーズ」だけじゃない「闇」

芸能界の「」というと、問題は「ジャニーズ」に絡む話だけじゃなく、様々なハナシがあちこちから聞こえてくる。
それらに共通するのは、いずれも人気の所属タレントを多数抱え、メディアへの露出が多い、ということは、イコール(TV)メディアへの影響力が大きい、大手の芸能事務所に絡む話だというコト。
以前の「ほぼナイ!」でも「干す」をテーマに取り上げた(『「ブラック芸能事務所」に公取委がメス:「干す」ヤツは誰だ?!(2018.2.28配信分レビュー:その3)』)けど、「干す」以外にも事務所移籍の自由が実質的にないとか、ほんの一握りの売れっ子以外の芸能人の多くは、多くの人権侵害に目をつぶって活動しなきゃならないとか、挙げだすとキリがない。

今回の元SMAPの3人は、テレビメディアへの露出が大幅に制限されている、というまさに局に「干された」状態なワケだけど、同じようなハナシで有名な例としては女優のんさんの例がある。
正直言って、初めて聞いた時には何かの冗談としか思えなかったこの名前も、実は所属事務所だったレプロ(因みに「干す」の回の「ほぼナイ!」で取り上げた清水富美加さん(当時)の所属事務所でもあった)からの独立を巡り、各メディアから「干された」ばかりか当時知られていた本名でもある「能年玲奈」の使用禁止まで追い込まれている、とあっては穏やかじゃない。
これを基本的人権の侵害、と言わずに何と言うのか。
朝日新聞デジタルのんさんに何が起きているのか エージェントが語る圧力

全国レベルですらこの有様なので、地方レベルは推して知るべし。法律の遵守なんて全く念頭にないことは容易に想像できるし、そのチェックの目も、緩いと言わざるを得ない。
その犠牲となった象徴的な例が、ボクの住む愛媛で起きた、ご当地アイドル「愛(え)の葉(は)Girls」の元メンバー、大本萌景(ほのか)さんの自殺だ。
10代の少女の自殺という衝撃的なニュースは当時全国レベルで報じられたけど、これは所属事務所のパワハラという、これまたお決まりの芸能界の「」だ。
しかし、残念ながらこの事件も、その後各メディアで深追いされることはほとんどなく、ましてや類似する芸能界とメディアの間で頻発している「」にスポットが当たることはなかった。
その原因は、ずーっと「ほぼナイ!」で言い続けている、本来なら問題の追及の急先鋒に立つべきメディアが、問題の当事者になってしまっているばかりか、内部に同様の問題(社員へのセクハラ・パワハラ)を抱えてしまっていて、問題解決に腰が引けているどころか、問題の深刻さに気付いていない可能性が高い、という非常に悩ましい問題だ。

正直こうした「芸能ネタ」「ゴシップネタ」に疎いボクが、あえてわざわざ調べてまでも「ほぼナイ!」で再三問題にしている理由は、まさにここにある。
芸能界の抱える「」というのは実は、MSMMainstream media (大手メディア) (特にテレビ)が抱える体質から出てくる「」でもある、とボクは思う。
そして、ちょっとカンのいい方なら、この本来なら追及すべき相手を完全に「忖度」して、腰が引けてしまっているというメディアの姿は、芸能だけじゃなく政治の報道でも全く変わらない、そしてそのウラにはメディアの体質がある、という構図に気付くだろう。
芸能ネタに話を戻すと、最近少し落ち着いてきた感のある吉本興業を巡る問題にも、同じくメディアの体質が透けて見える。
吉本の芸人と吉本の上層部の構図を面白おかしく連日取り上げているメディアだけど、実はそのメディアが吉本が抱える問題と同じような問題を抱えている。
吉本上層部と所属芸人との力関係は、まさしくテレビ局と下請けの制作会社や局内での上司と部下の関係と同じなので、最後の最後は「だってしょうがないじゃないか」とえなりかずきばりの言い訳で全てを済ませてしようというのがミエミエの状況だ。
自分たちの問題を是正できない、いや、是正する気がない、いや実は、是正しなきゃダメだ、とすら考えず、「テレビってのはそういうもんなんだ」で片づけようとするメディアに、吉本問題の本質に切り込むような能力も覚悟も、残念ながらありそうにない。

最後になったけど、独禁法違反Antitrust Violations という一部の者が利権を独占することを禁止する自由経済の基本中の基本のルールである独占禁止法、つまり少数の既得権者による利権の独占はダメで、自由でフェアな競争環境を確保しなければその業界全体の活力が失われてしまう、という根本を最も分かっておらず、違反しまくっているのが実は MSM なのだ、というのを今回の結論とする。
これまた「ほぼナイ!」で何度も問題にしている記者クラブなんて独禁法違反の存在そのものだし、テレビ局が業界全体で限られた電波を独占し、外部からの新規参入を一切拒み続けている、なんてのはどこをどうみても独禁法違反でしかない。
そして、実は冷静に考えれば独禁法違反で懸念されている、業界全体が活力を失う(そして、やがて自滅する)というのが、テレビがネットに急激に若年層の視聴者や広告料を奪われ、質の低下が再三指摘されるようになったことも思いっきり当然の帰結、と言える。
それ見たことか、だから独禁法違反はダメなんだ、という声は、MSM各社の上層部に届くだろうか。

それにしてもこのデジャブ感満載の状況を見るにつけ、いよいよメディアの「」は深いなぁ…とため息をつくしかない。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫

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