日韓対立、海外はどう見ている?:またも「お家芸」?! 自分の事は棚上げ(2019.8.28配信分レビュー:その1)

- ほぼナイ! HEAD LINE -
<「どっちもどっち」どころではない状況です>
文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領

文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領(写真:Wikipedia)

日韓の対立が経済から軍事にまで波及し悪化が進む中、海外メディアでは日本の責任が重いとする見方が広がっており、日韓のメディア対策の差が如実に表れています。

日本のMSM(Mainstream Media)が韓国のメディア以上の報道量で韓国の政治事情や政局を連日こぞって伝える一方、通常、日韓を含む東アジアへの関心が薄く報道量も極めて少ない欧米のメディアでは、今回の騒動もやはり報道量自体が限られている中、経済メディアを中心に報道するメディアもあります
しかし、そのほとんどは日本の報道とは異なり、韓国や文大統領を批判する声は限定的で、日本に対し批判的な報道が目立っています。

(以上 HEADLINE 2019.8.28)

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【ココがヘン!ニッポンのニュース】日韓対立、海外はどう見ている?:またも「お家芸」?! 自分の事は棚上げ

<参考:東洋経済オンライン止まらぬ日韓対立、興味本位では済まない現実

基本、日韓に興味ナシ

未だに日本のMSMMainstream Media大手メディア)では連日の韓国バッシングが続いていて、新法相のスキャンダルだの文大統領を中心とした韓国政局に関する報道の熱心さは肝心の韓国国内の報道を上回る、とまで言われてるけど、もちろんそれは日本くらいのもので、韓国とかしいて言えば中国等の周辺国は別として、日韓から遠く離れた欧米のメディアはそもそも韓国の政局やスキャンダルなんかに、はっきり言って興味はない。
大体、こういっては何だけど、韓国や、それから実は日本も、国際社会の中での影響力は完全に中国に遅れをとっていて、日韓のモメ事なんか実はどうでもいいハナシのひとつでしかない。
なので報道の絶対量が普段から少ないのも当然のことだし、今回も欧米のメディアが大きく報道量を増やすことはしていない。

もちろん、すったもんだの末に法相に就任した曺国氏の一連のスキャンダルについても、ひょっとしたら韓国人より日本人の方が詳しいかもしれないぐらいの勢いだけど、欧米人はよほどの韓国通でもない限り、多分知らない。大体、韓国(とか日本)の政局なんて、普通の市民は全然知らないし、興味もない。
日韓なんかより中国の方が全然影響力があるので、習近平がどうしたとか、そっちの方がはるかに詳しい。その上米国は、中国と大モメにもめてるワケだし。
ただそれでも、中国がいくら大国とはいえ、結局はアジアの国、地理的に言っても距離があるので、欧米諸国に比べてマイナーな存在であることは間違いないんだけど。
ま、要するに、日韓なんか(欧米にとって)結局はどーでもいいハナシだ、ってコト。

もちろん「GSOMIA」なんて、余程の軍事オタクでもない限り、本気で心配してる欧米人(メディア)はいないし、それ以前に興味もない。
実はアメリカが内心怒っている、とMSMで訳知り顔で各コメンテーターが解説してたりするけど、そもそも怒る以前に肝心のトランプが「GSOMIA」を本気で考えてたかは怪しいし、それ以前に知らなかった可能性の方が高いんじゃないか、とボクは見ている。
知らないモノをどうやって怒るのか。謎だ。「怒ってる」じゃなくて「怒ってて欲しい」の間違いでしょう?
いい加減、自分勝手な願望で報道するのは止めた方がいい。

経済メディアは、別

ただ、そんな中でも、グローバル経済が拡大し続ける現代では、東アジアの「小国」2国がモメるだけでも、その影響はバカにできない。
ましてやサムスンとか、企業単独で見れば世界経済にかなり大きいインパクトを与える企業も韓国には存在するので、日本政府が韓国への経済制裁(ではなくて規制の厳格化だ、といくら日本政府が言い張っても欧米のメディアは全然聞いてないので意味がない)を強めれば強めるほど、欧米社会では「日本の韓国バッシングが世界経済に悪影響を与える」という批判が拡がることになる。

という事で、今回の日韓問題を取り上げている欧米メディアの中心は、実は経済メディアだったりする。
ここで「ほぼナイ!」でも取り上げた、二本の新聞記事(WEB版)をご紹介。

The New York Times(以下NYT)はもともとリベラルな論調で知られていて、当然のように安倍政権に対しては批判的なので、今回の記者のコラムも日本政府のやり方に懐疑的なのはある意味当然だけど、ここで大事なのは、NYTはあくまでも一般紙だという点。
むしろ安倍政権に批判的なのが、経済紙であるBloomberg。今回紹介してるのは Editorial、つまり社説だけど、見出しからしていきなり “Hopeless” と結論づけてる。
「アベが韓国に仕掛けた貿易戦争に勝ち目はない」
一連の日本政府の韓国に対する対応を、米中と同じレベルと見なして、(くだらない)貿易戦争だ、しかも勝ち目もない、無意味な争いは今すぐやめろ、と批判してるのだ。
NYTより、普段はリベラルというより中立、いや保守的とされているBloombergの方が明らかに安倍政権にキビしい。
その理由はカンタンで、この日韓のモメ事が明らかに経済に影響を与え始めてきたから。
そうなると世界的なアメリカの経済紙であるBloombergとしては黙ってない。政治家同士がアジアの片隅でガチャガチャやってる分には興味もなかったけど、世界経済に影響が出てきそう、となると話は別。「いい加減にしろよ!つまらん意地の張り合いで貿易にまで影響が出て、万が一ダウが下がったりしたらどーするんだ!!」ってな感じか。

ということで、一部の多少冷静なメディアは日韓を「どっちもどっち」的な表現で伝えてはいるけど、欧米では、一般のメディアは基本興味ナシ、経済メディアは日本が悪い(とゆーか、どっちが悪いか知らんけどとりあえずいい加減にしろ、そのためには日本、余計なコトすんな)でした。

結局は「記者クラブ」に対する仕返し、のようなもの

それにしても日本はことごとく、こうした外国とのモメ事に、弱い。
日本のメディアではもちろん日本政府の「言い分」を全面的に取り上げるけど、実は日本政府の「言い分」が海外で伝えられること自体、ほとんどない。
その原因として再三言われてるのが、外務省がちゃんと仕事してない、だの、英語をはじめ外国語での情報発信がほとんどできてない、だので、挙句に「ディベートやプレゼンの教育が不足している」「日本人はアピール下手」「日本人はシャイな国民性だから仕方ない」と、最後は日本国民全員のせいにして、結局は諦めモード、だ。
もちろん、今取り上げた分析は、どれも間違ってはいない。まぁ外務省の問題は、まじめに仕事されてる方も当然たくさんいらっしゃるワケで、要は仕事してないんじゃなくて、機能してない、結果が出てないというハナシだと思うけど、まぁどっちにしてもダメなことに変わりはない。
ただ、語学力も日本人の教育もメンタリティももちろん重要だけど、こうしたこと「だけ」を取り上げて、自己反省が一ミリもないのは、明らかにおかしい。
自己反省をしなきゃいけないのははもちろん日本人全員、ではなく、日本のMSMだ。どういうことか。

そもそも海外メディアは、構造的に日本の「言い分」を正確に報道する構造になってない。メディアが伝えなければ、海外の一般市民はもちろん、政府関係者だって自国のメディアを大いに活用している。そのメディアが取り上げない情報(日本の「言い分」)を知らなかったとしても不思議ではない。
その海外メディアの多くは、実は10年以上前から日本での取材活動・情報収集を大幅に縮小している。
この理由は単純で、日本の取材・報道価値が下がっているから。アジアの盟主の座はとっくに中国に譲り渡していて、元からないと言われていた政治力に加え、唯一の拠り所だった経済力も、日本だけが一人負けしている各種経済指標を見れば分かるように、アジアの中でも中国はおろか成長著しい東南アジア諸国にも追い上げられ、こと、成長力という点で言えば完全に抜き去られている。
ついでに言うと、ここ数年、インバウンド、と称して外国人観光客が急激に伸びていて、特に観光地は潤っているようだけど、実はこれが日本経済没落の象徴だ、というハナシはほとんどメディアに流れることはない。インバウンドの増加は日本の魅力が広く世界各国に認知されてきた、というよりも、単純に日本の物価が相対的に低い、おまけにメシも(安いクセに)ウマい、景色もいいところが多い、となると、多少英語が通じなくても行かない手はない、というワケ。
日本の物価が安い、ということは、要するに経済力が下がっている、デフレだ、というコト。
メディアでインバウンドと紹介されている外国人観光客や、実際に目にすることが多くなった外国人観光客を見ればわかるけど、こういっては失礼だが、とても海外の富豪が日本に大量に押し寄せているようには見えない。むしろその逆ではないか、という風にすらお見受けする。
特に中国人に多い、と言われるインバウンド旅行者のマナー違反、みたいなものの理由として、要するに「そういった方」が多く来ている結果、と考えると合点がいく。
本当の富豪・金持ちがどういう振る舞いをするか、というのに、国による差はそんなにはない筈だ。そこにあるのは情報量と経験の違い、だとボクは思う。

話がそれた。このように、急速に取材価値を失っている日本の中での象徴的な事例として、海外メディア各社の日本(東京)支局が相次いで撤退・大幅縮小があった。10数年前からの話。日本の衰退に加え、中国の台頭が目立ち始めた時期と、当然のように重なっている。もちろんメディア自体の経営難もネットの台頭などで拍車がかかったこともあるけど。そして、日本支局の職がなくなった記者たちはどうしたか、というと、主には中国(上海や北京)に移った。アジアの取材拠点が、東京から北京や上海などに移っていったのだ。なので、日本で大きな事件が起こると、海外のメディアは支局を持っていない(あっても手薄)から、こうした近隣の支局から派遣されたり、そもそも派遣すらされず、その近隣の支局から伝える事も珍しくなくなった。
これが「構造的に日本の「言い分」を正確に報道する構造になってない」という実状だ。

けど、このハナシ、単に日本が中国に抜かれました、というだけでは終わらない。
抜かれる前から日本の「言い分」は海外ではほとんど伝えられてこなかったのだから。
ではなぜ、日本の「言い分」は海外ではほとんど伝えられないのか。
その「犯人」はズバリ、「記者クラブ」だ。そう、またコレ。
記者クラブ」の弊害として、「クラブ外のメディア」が取材活動から除外されているハナシはこれまでにこのブログでも何度もしてきた。
この「クラブ外のメディア」というのには、当然のように海外メディアが含まれる。
つまり、支局があろうとなかろうと、海外メディアは昔から日本でまともな取材活動ができなかったのだ。
おまけに「記者クラブ」は自分たちで政府の記者会見の開催権を握っている。
つまり、政府の会見から海外メディアを排除しているのは、日本政府ではなく「記者クラブ」だ。
因みにこのハナシは「記者クラブ」自らが明言しているので間違いがない。だからこそ、犯人は「記者クラブ」なのだ。

記者クラブ」によって取材から除外された海外メディアは、その「記者クラブ」が出す情報を見て報道するしかない。
自分達が訊きたい内容もロクに訊けず、邪魔された相手の情報に頼る。それでまともな報道をしろ、と言ってもムリでしょ、そんなの。
当然、その報道には、誤解や思い込みがバンバン入り込むことになる。もしかしたら故意に日本に不利な…そんな事例だって、あったとしてもおかしくない。
こんな状況では、安くないカネを使って日本に支局を置く意味があるのか、はなはだ疑問だ。

ということで、日本が海外に誤解される原因の一端は明らかに「記者クラブ」にあるのだが、そういうことは一切棚に上げて、日本が誤解されている、韓国はオカシイと連日報道する様は、まさにこれまで繰り返されてきている「記者クラブ」メディアの「お家芸」そのもの、という、例によって何の救いもないおはなし。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫

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