アマゾン森林火災、その後:未だ見えない終息へのシナリオ(2019.9.25配信分レビュー:その2)
- ほぼナイ! HEAD LINE -
<くだらない保身とプライドが続いています>
2ヶ月が経過する現在も終息の気配すらないアマゾンの大規模森林火災は、しびれを切らしたEU側の圧力から、ブラジル政府が折れる形で軍の動員を決めたものの、鎮火の目途は未だ立っていません。
現在問題になっているアマゾン森林火災は、ブラジル政府を含め、正確な規模が把握されていません。
「地球の肺」とも呼ばれ、広大な規模を誇るブラジルのアマゾン。しかし今年に入って13万か所を超える場所で火災が発生しており、アマゾン全体では史上最大規模の火災となっています。
今年の元日に発足したボルソナロ政権下で、前の政権からアマゾンの火災の焼失面積は倍増していると言われており、火災の主な原因は開拓目的での人為的なものであることから、現政権に対する国際的な非難も続いています。
(以上 HEADLINE 2019.9.25)
< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.49):【 見逃し配信を視聴 (YouTube・part 01) 】【 見逃し配信を視聴 (YouTube・part 02) 】>
【ココがヘン!ニッポンのニュース】アマゾン森林火災、その後:未だ見えない終息へのシナリオ
<参考:BBCニュース> アマゾン森林火災は「国内問題」 ブラジル大統領が国連で反発
ブラジル・アマゾン大規模火災の実態
前回の「ほぼナイ!」とレビューブログ(失われた?!G7の意義:くだらないプライドの犠牲)でも取り上げた、ブラジルのアマゾンで続いている大規模森林火災。
火災件数が13万超とか、1時間にサッカー場110面相当の森林消失とか、とにかく想像を絶する数字が世界の報道で飛び交う中、あまりの規模の大きさに加え、火災自体が分散発生していることから、当事者であるブラジル政府含め、誰も正確な火災の規模とその全容を把握できないでいる。
いくら大きな山火事とはいえ、何で一ヵ所にドーンと発生しているものをいつまでも消せずにいるのか、と不思議になるけど、実は一言でアマゾン森林火災、と言っても、アマゾンはメチャクチャ広く、ブラジルにあるのはその6割、その中で様々な規模の森林火災があちこちで同時発生しているので、文字通りしっちゃかめっちゃかで収拾がつかない状態、ということらしい。
だけど、前回も触れたように、問題の根源はブラジル政府(ボルソナロ政権)にあるというのは国際社会の共通認識になっていて、だからこそ批判と(ブラジル政府には任せておけないという危機感から)支援の申し出がまさに世界中で相次いだワケだ。
批判集中のボルソナロ大統領の現状
今年の元日にスタートしたボルソナロ政権が大規模な開発目的でアマゾンの森林伐採を許した、というより主導し、その結果が火災の多発を招くことになった、というのも国際社会の共通認識だけど、肝心のボルソナロ政権は自らの「失政」を一切認めていない。
アマゾンの火災が国際社会で問題視され始めた当初は、「こんなに大規模で多発する火災を我々(ブラジル政府)がコントロールすることは不可能」と完全にお手上げ状態というか逆ギレ状態で、問題を放置する気マンマンだった現政権。
ただ国際社会はそれを「はい、そうですか」と見過ごすことはできない。
ブラジル(はアマゾン全体の6割だけど)のアマゾンは「地球の肺:The lungs of the Earth」と呼ばれ、世界中で排出される温暖化ガス(二酸化炭素・CO2)を蓄えることで、ただでさえ温暖化が問題視されている中で重要な役割を果たす存在と言われているから。
しかし、ボルソナロ大統領は、そんなことは我関せず、とばかりに国際社会の猛烈な批判を完ムシ。火災の責任はNGOにある、と自らの責任は一切認めず、ボルソナロ批判の急先鋒となっているマクロン仏大統領に対しては個人攻撃を繰り返すなど、やりたい放題の状態になっている。
そんな中でも、ブラジル国民のボルソナロ大統領への支持は根強く、国際社会でアマゾン火災が問題になって以降も、それが原因で支持率が急落する、なんてこともない。
ブラジル国民の間では、アマゾンの地下には金やニオブといった鉱物資源が大量に眠っているというのが常識になっていて、アマゾンに入ろうとする環境保護団体も富の略奪者と敵視されている。
また、特にアマゾン地域の住民は貧困にあえいでいて、「森林保護といっても、そんなのちっともカネにならない。オレたちはどうやって食べていくんだ」と嘆いているのが実態だ。
そんな中で国際社会に堂々と反旗を翻し、「(ボルソナロいわく)過剰な環境保護」を批判し、アマゾンの森林開発を認めるボルソナロの支持が国内で強固なのも当然かもしれない。
ついでに言うと、ボルソナロはその他にも、「ブラジルのトランプ」「差別主義者」「極右」の異名を持ち、今回のアマゾンの森林火災に対する国際社会のバッシングに対しても、マクロン大統領夫人を中傷するなど、かえって国際社会の批判が増える結果になっているが、そんな「お行儀の悪さ」も国内の支持者には好意的に映っている、というのも実に「トランプ的」と言えるかもしれない。
事態鎮静化にわずかな光も見えるが…
未だに続く森林火災だけど、さすがに事態が徐々に沈静化の方向に向かっているという報道でも出てきた。
8月の下旬から、さすがに国際社会のプレッシャーに押される形でブラジルの軍が消火活動に投入され、その期間も延長されていることに加え、森林火災の主因とも言われ批判の的になっていた「野焼き」もボルソナロが「しぶしぶ」禁止したこと、更にはブラジル政府が当初から言ってきたことだけど、例年通りアマゾン地域の雨量が9月に入り増加してきた(これがあるので現政権は当初は火災を放置する姿勢だった)ことなどの好条件が重なったからか、8月に比べ9月の火災件数が約35%減少したと共同通信が伝えている。
とはいえ、アマゾンの火災は未だ続いている。そうでなくても温暖化や気候変動が原因と言われる自然発生した大規模な山火事が、アメリカやアジア、ロシア…と世界中で実は多発している。
しかもその被害の規模はどんどん増えてづける傾向にある。これも火災の発生原因と同様に、自然環境がもたらしたものと言われている。
海外だけじゃない。日本でも台風や大雨の被害が続いているけど、この被害の拡大の要因のひとつに、日本のMSM(Mainstream Media:大手メディア)があまり伝えない、森林の整備の不備と過去の森林行政の失敗が一部の専門家の間などで指摘されている。ダムや堤防に注目が集まっているけど、脆弱な森林から流された流木の被害もかなりの数になっている他、そもそも森林の保水機能が十分に働いていれば、水害の規模も軽減されていた筈だという指摘もある。
こうした多角的かつ継続的な環境問題に関する分析や報道が日本のMSMに決定的に不足している間にも、世界中で様々な問題が日本を含め多発していることは、誰にも否定ができない事実だ。
イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫