<まるで「子どものケンカ」のようです>
金正恩国務委員長

Kim Jong-un委員長

北朝鮮による度重なる米国および日韓に対する軍事的挑発に対し、トランプ大統領はTwitterや国連総会演説で言葉により激しく応戦、これに 金正恩Kim Jong-un 国務委員長が更に強い声明で返すという泥仕合が続いています。

海を隔てて日本の隣国である北朝鮮の、核兵器の使用もちらつかせながらの度重なる軍事的挑発は、日韓のみならずアメリカまでも標的になる可能性が出てきたことで、一気に欧米を巻き込む深刻な脅威になりつつあります。
国連安保理は北朝鮮に対する制裁決議を可決、これまで北朝鮮寄りとみられていた中国やロシアも制裁決議に目立った抵抗はせず、協力する姿勢を表明したことで、北朝鮮に対する国際的な包囲網は更に強化されている一方、北朝鮮の暴発やアメリカの先制攻撃も現実味を帯びてきていることで、世界的な脅威が増しています。

(以上 HEADLINE 2017.09.27)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.27)【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>


『ココがヘン!ニッポンのニュース:北朝鮮問題:「政府がつくる危機」にメディアは立ち向かえるか

<参考:東洋経済オンライン北朝鮮問題で今後起こりうる3つのシナリオ

「ほぼナイ! HEADLINE」では事前に準備したものをそのまま紹介しているので、米朝のやり取りを「子どものケンカ」としてるけど「ほぼナイ!」本編ではボクは米朝の現状を「ガキのケンカ」と表現した。
実際、「破滅的な結果」だの「火の海にする」だのといった
 金正恩Kim Jong-un の出したとされる過激な声明に対し、トランプが得意のTwitterで応戦するばかりか、金正恩を”Rocket Man(ロケットマン)“と国連演説の場で最大限の侮蔑を持った呼称で呼び、その後も両者で過激なコトバが飛び交った。
もちろん、こんな下品かつ過激な国のトップ同士のやり取りは過去に例がないわけで、こりゃやっぱり「ガキのケンカ」以外のなにものでもない。

もともと北朝鮮は米国との直接対話で隣国の日韓に駐留する米軍を撤退させ、北朝鮮及び金政権の安全を確保することが最大の目的とみられている。
それが今や北朝鮮の核兵器は米国本土まで届こうとしており、そのためのミサイル発射実験を繰り返している。11月に入った時点で、北朝鮮の動きは不気味なほど静かな状況だが、着々とミサイル発射実験や核兵器の実験を進めている兆候も伝えられており、まさに「嵐の前の静けさ」といったところだ。

これまでは欧米各国にとって、何のかんの言いながらも明らかに北朝鮮問題は「他人事」だった。
いくら北朝鮮が軍事力を強化しようが、自分たちに危害を加えることはないと高を括っていた。距離も離れているし、技術力もそんなに高くなさそうだし。
だが、甘かった。北はマジで核(兵器)を持っちゃったみたいだし、それを飛ばすミサイル技術もいつの間にか高まり、アメリカまで届く事がほぼ確実な状況まで来ている。
アメリカに直接危害が及ぶ、となるとそれはヨーロッパ各国にしても他人事ではなくなる。狙われてるかどうかは別にしても、物理的にはミサイルが「届いちゃう」のだから。
実際、このところの欧米の北朝鮮問題に関する報道姿勢は、明らかに「本気度」が違う。国際社会は、マジだ。

とはいえ、例によってと言うべきか、日本と他国のメディアの報道は大きく異なる。
例えば韓国。もとは北朝鮮と同じ国だったワケで、その歴史的背景から何から日本とは全く違うとはいえ、現在は北朝鮮と韓国は敵国同士であり、何せ陸でつながったまさに隣国、北朝鮮に万が一の事態が起これば、一番危ないのは日本じゃなくて韓国なのだが、韓国メディアは極めて冷静だ。それは欧米やその他アジア諸国、更に中露も同様だ。
要するに、一番騒いでいるのは日本であり、その他の国は危機感は持ちつつも、極めて冷静なのだ。
その理由は単純で、結局、北が核ミサイルを撃ったり、アメリカが北に先制攻撃を仕掛ける確率は、日本の報道が伝えるよりもはるかに低い、と考えているからだ。
その根拠は、ほぼナイ!でも指摘している通り、北が何度も撃っているミサイルは全部 弾頭Warhead が空っぽの状態で、要するにただの鉄の塊なのだ。
しかも日本の上空を飛んだ、と言っているのも、日本を通過する際は上空遥か高く飛んでいて、その高さは日本の上空をバンバン通過している人工衛星より高い。
北のミサイルが仮に日本に誤って落ちてくるとしても、それは人工衛星が突然トラブって空から降ってくる確率より低い、って考えた方が自然。

ついでに言うと、ここまでミサイル、ミサイルと言ってきたけど、実はこれは正確じゃない。
正確な日本語ということで考えると、北がこれまで撃ってきたものは 弾頭Warhead が空っぽなのだから兵器とは言えない。
ミサイル、というよりも、トランプが言うように、ロケット、と呼ぶ方が正確だ。
北はちゃんと「寸止め」してると言えるわけで、北が何のかんの言って冷静さを保っている、と考えられる。
だから他国は比較的冷静なのだ。もちろん、危険度が高まっていることは間違いないけど。
日本のメディア(や政府)がミサイル、ミサイルと騒ぐのは、やはり異常だ。

ただ、今回ボクも初めて知ったけど、日常の英語では ミサイルMissile ロケットRocket は日本語のように明確に区別されていないようだ。

比較的安全なものもそうでないものも、全部ひっくるめて ミサイルMissile と呼ぶことが一般的。
海外の報道を見ていると、とりあえず全部 ミサイルMissile として、ただし今回の北のものはすべて ミサイル実験Missile Test などと呼び、「すぐに」武力衝突が起きるかのような報道には全くなってない。

ナオミ・クライン

Naomi Klein氏

こういった危機を煽るやり方というのは、政権が使う常套手段で、別に日本に限った話じゃない。
カナダの ジャーナリストJournalist  Naomi Klein氏の著書で知られる “ショック・ドクトリン”:”The Shock Doctrine” というヤツで、国民の危機感を煽り、為政者に都合のいいようにコントロールしようとする手口は、よくある「手」だ。
まさに「ベタ」だけど、結構、効く。怖いことは、やっぱりイヤだし、思わずパニックになってしまう。

そうした、国民のパニック状態に対して、冷静な情報提供と分析で国民を覚醒させ、冷静な対応を呼びかける役割が求められるのが、報道メディアなのだ。
だが、日本のメディアの大多数は、政権の Spin にまんまとハマり、やれ「圧力」だ、やれ「ミサイル」だ、と完全にパニック状態だ。
その一方で、リベラルな一部のメディアが、逆に「対話」を声高に叫ぶだけで、国民が安心できるような根拠は示さないのだから、結局どっちもどっちだ、ということになる。
一番情報を持ち、冷静な分析ができるはずのメディアがこの調子では、国全体がパニック状態なのも無理はない。

最後に。先ほど紹介した、The Shock Doctrine” の翻訳本をご紹介しておくので、興味のある方は是非ご一読を。

 

イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫