<「補佐官級総理」の誕生です>
イヴァンカ補佐官と安倍総理

イヴァンカ氏訪日 (gettyimages)

トランプ大統領の初来日に先駆け、イヴァンカ大統領補佐官が来日、端麗な容姿に注目が集まり、安倍総理自らが厚遇を示す異例の対応となりました。

長女で補佐官のイヴァンカ氏がトランプ大統領の訪日に先駆け訪日、安倍総理はイヴァンカ補佐官にも直後に訪日したトランプ大統領同様、自ら異例の歓待でもてなし、日米関係及びトランプ政権との蜜月ぶりをアピールしました。
トランプ政権はアメリカ国内外での評価は低く、あえてトランプ政権とは距離を置こうとする国も少なくない中、安倍総理の姿勢は際立っており、トランプ批判の一環で安倍総理を揶揄・批判する海外メディアも多く、今回の二人の訪日を日本にとって大成功と報じる
海外メディアを見つけることは大変難しいのが実状です。

(以上 HEADLINE 2017.11.22)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.29)【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>


『ココがヘン!ニッポンのニュース:イヴァンカ&トランプ訪日:異例の厚遇で「補佐官級総理」誕生

<参考:ニューズウィーク日本版トランプ訪日で米メディアが唯一注目したのは「鯉の餌やり」

実は注目度が低かったトランプ訪日

先日のイヴァンカ氏とトランプ大統領の相次ぐ訪日は、連日メディアで取り上げられた。
それにしても、アメリカ大統領の来日の報道は、今回に限らず日米間の格差が大きいが、今回は特別だった。
日米間、というより、日本と諸外国間のギャップ、と言った方がいいかも。

そもそもアメリカの内政はトランプの大統領就任以来、完全に停滞している。
政策は一つも前に進まず、現時点では気候変動の国際的取り決めである パリ協定からの脱退Withdrawal from the Paris Agreement が唯一の公約達成と言われてるけど、これはもともと国内外で評判の悪い公約だったので、これなら何もしない方がまだマシ、とか言われてるほど評判が悪い。
それどころか良いも悪いも、それ以前の段階として政権の主要スタッフが現在に至ってもほとんど決まらず、オバマ時代の前任者を暫定ポストに据えてお茶を濁す、という状況が続いている。
なぜ決まらないかというと、有力な人材が軒並み「トランプと一緒に仕事なんかできない」と拒否してるから。実に分かりやすく、かつどうしようもない理由だ。
このまま任期である4年を迎えるかも、と言われているほどで、要は完全な「嫌われ者政権」で、支持率も歴代最低レベル。
こんな状況だけに、内政で全く得点のあげられないトランプ政権としては、今回のアジア歴訪で少しでも得点を稼ぎたかった。
そう、今回のトランプ訪日はアジア歴訪の一環であり、訪日はその一部でしかない。
とはいえ、国際的な評判も注目度も低いトランプ政権とはいえ一応は初の本格的な外遊なだけに、各国のメディアも今回のアジア歴訪を取り上げた。
だが、元々注目を集めていたのは訪中(中国)とベトナムでのAPEC首脳会議くらいで、アジアの中で完全に中国にリーダーの座を奪われている日本訪問が注目を集めるはずもなかった。

 

イヴァンカ訪日に舞い上がる安倍総理とメディア

そんなトランプ大統領の訪日に先駆けて、娘のイヴァンカ補佐官が来日。ワイドショー的にはこっちの方が盛り上がったかもしれない。
元々イヴァンカ氏はトランプのアジア歴訪に同行する予定だったものの、一説によると停滞する内政に加え、くすぶり続けるロシアゲート疑惑が新たな局面を迎えており、イヴァンカ氏にアメリカ国内の対応を任せたかったトランプが、娘に早々の帰国を命じた、と言われている。
そのイヴァンカ来日の最大の目的は、東京で開催された「国際女性会議WAW!」への出席とそこでのスピーチだった。
来日期間中、そのルックスに注目が集まったイヴァンカ氏だったが、セクハラについて「決して許されない」と熱弁をふるったWAW!でのスピーチは、日本のメディアに高く評価された。
「あの」父親の娘が実に立派な…という、まさにトンビが鷹を生んだ的な取り上げられ方は記憶に新しい。
このスピーチは、もちろん彼女の母国アメリカはじめ世界でも報道された。そしてスピーチ自体は確かに一定の評価を受けたのだが、一方で批判も目立った。
これはほぼナイ!」でも取り上げたけど、端的に言えば “Tell Dad.(お前のオヤジに言え)” という一語に尽きる。
彼女のスピーチを紹介したYoutube動画のコメント欄には、この手の批判であふれた。
もちろん大統領選挙期間中にさんざん批判された、トランプ自身のセクハラ問題を念頭に置いたものである。
イヴァンカ氏も実に気の毒だ。父親(トランプ)の様々な言動は米国内のみならず世界各国で悪評を呼び、もはやトランプ本人に何を言ってもムダ、という風潮が生まれており、最近はトランプ批判の矛先が娘のイヴァンカ氏に向かっているのだから。

そんな気の毒なイヴァンカ以上に、海外メディアである意味注目を浴びたのが実は安倍総理だ。
長身のイヴァンカ氏と安倍総理の2ショットが、世界の嫌われ者のトランプ政権に唯一と言っていいほど媚びを売りまくる日本を象徴する写真として、海外メディアに取り上げられたのもそうだが、それ以上に奇異に映ったのが、出迎えや会食、会議への出席と、イヴァンカ来日中、常にと言っていいほど傍らに居続けた安倍総理の姿だ。

タイトルで「補佐官級総理」誕生、と表現したが、そんな呼称はもちろん、ない。
外交において、メンツというのは非常に重視される。例えば両者がどんな話をしたか、というのももちろん大事だが、それと同じくらい重視されるのが、誰と誰が会ったか、だ。
例えば、ある国のトップ(元首)が外国を訪問した場合、訪問先も同じ地位にある人物、つまりトップが出迎える、というのが礼儀だ。
下の地位の人間が対応したとなれば、出迎えられた方はバカにされた、下に見られた、ということになり、ヘタをすれば国際問題だ。
今回はその逆だ。娘とはいえ、イヴァンカ氏は大統領補佐官、日本で対等な地位に該当する人物、となると、当然「首相補佐官」ということになる。

もちろん安倍総理がイヴァンカ氏と会うのは自由だが、あそこまでべったりとついて回ると、あぁ、アメリカの大統領補佐官の カウンターパート(対等な相手・対応相手):Counterpart は日本の総理なのだ、と思われても仕方がない。「日本はアメリカの子分」という国際的な評価は、こういうコトでも生まれてしまう。
ハズなのだが、なぜか日本のメディアでこういう報道は、まずない。
安倍総理も日本のメディアも、イヴァンカ氏の美貌に完全に舞い上がっていた、としか見えなかったのはボクだけだろうか。

トランプ訪日で日本政府は何が目的だったか

そしてイヴァンカ氏と入れ替わるようにトランプ大統領が訪日。
米大統領のアジア歴訪時には日本のメディアではおなじみの、「日本を最初の訪問国とするか」報道が今回も炸裂した。
実はこの報道にはまったく意味がない。過去を調べればわかるが、日本は常に「最初の訪問国」だからだ。
そしてその理由は単純で、他の訪問国より日本の方がアメリカに近いので、最初の訪問国を日本にするのが一番移動の効率が良い、というコトに過ぎない。
まぁ、よっぽど嫌われたら順番が後回しになるかもしれないけど、それならはじめっから来ない可能性が高い。

さて今回のトランプ訪日で、世界的な注目はもちろん、実は日本政府としてもトランプ大統領とこの案件を話し合いたい、というのは特になかったようだ。
まぁ普段あれだけ「トランプ大統領を支持する」と国際社会にアピールしてるのだから、改めて話し合うべき懸案事項などある筈もないが。
逆に一番日本側が恐れていたのは、トランプ側が日米二国間のFTAを持ち掛け、米国に有利な貿易関係をゴリ押しされないか、だった。
その話だけは絶対避けたい、ということだったので、むしろ来てくれない方が良かったのではないか、という気さえする。

そんな状態だったので、日本側としては日米首脳間の関係を強化する、信頼関係を深める、というよくわからない、意味があるんだかないんだかよくわからないものが主目的だった。
という、ウソのようなホントの話。
実際、日本側が用意したメインイベントは、トランプ大統領と安倍総理のゴルフだった。
しかし、残念ながら、というべきか、トランプ大統領はゴルフどころではなかった。前に書いた通り、内政は八方ふさがりで、ロシアゲートで文字通り尻に火が点きかけている。
アジア歴訪では、とにかくポイントを稼ぐ、何が何でも「お土産」を持って帰る。それしかない。
当然のように、ゴルフは早々に切り上げられた。
ゴルフ上級者として知られるトランプ大統領と安倍総理では、ゴルフ場でまともな首脳会談などできる筈もない。
日本のメディアですら、安倍総理が残した長いパットにトランプがOKを出す、という、どう見てもゴルフを楽しんでいる風には見えないシーンが報道された。
来日前から大騒ぎされたゴルフ外交は、完全な失敗である。日本政府は一体何がしたかったのか。

そして遂に、やっぱりゴルフなんかしなきゃよかった、という決定的シーンが訪れた。
ゴルフ会談(と言ってもさっさと終わらせて実のある会談がしたかったトランプと、遥か後ろで大叩きしている安倍総理が、まともな会談などほとんどできなかった筈だが)の数日後に世界を駆け巡った映像がある。
これも
ほぼナイ!」で取り上げた、衝撃の映像だ。

Trump carries on golfing as Japan’s Shinzo Abe falls into bunkerBBC

この映像はテロップにある通り、テレビ東京がわざわざヘリまで飛ばして撮影したモノだが(もちろんこんな映像を撮ろうとはしてなかった筈だが)、「なぜか」日本のサイトでは次々に姿を消しているので英BBCのサイトを紹介しているが、他にもCNNなどアメリカ本国など、文字通り世界のメディアで拡散している。
これも両者の関係を象徴した映像で、BBCの説明にある通りトランプ大統領は安倍総理の落下に気付いておらず完全に置き去りにしており、つまらないゴルフはさっさと終わらせようという態度がモロに出ている。
そして、ただでさえ置いて行かれてる安倍総理がトランプに追いつこうと焦って、無理にバンカーを駆け上がろうとして華麗な二度目の落下を果たす。
そして当然のように、荒らしたバンカーはほったらかしで他人任せ。ゴルフ好きの方からすると、正視できない映像だろう。
まぁ、見事に日本の評判を下げた、全く無意味な「ゴルフ外交」だった。

ゴルフだけではない。今回のトランプ訪日は全くと言っていいほど得るものがなかった。
そして、一部では最も心配されていた、トランプの天皇陛下との謁見も、予想された通りヒドいものだった。
前回のオバマ大統領の陛下との謁見では、オバマが深々とお辞儀して陛下への敬意を示し、米国の一部でへりくだり過ぎとの批判まで出たほどだったが、何でも前任者のオバマを否定したいトランプがそれを意識したのかどうかはともかく、まぁさすがに噛んでたガムを陛下のお顔に投げつける、なんてことはしないだろうとは思っていたが、上着のボタンは開けっ放しで、よく言えば「フランクに」陛下に話しかけるなど、米国人という点を差し引いても、およそ他国の皇室に対する敬意など、全く感じられないものだった。
さすがにこれはひどいと思ったのか、日本のメディアはあまりこの謁見のシーンは報道しなかったようだが、本来問題があると思えば、そのシーンを繰り返し報道し批判するのが、メディアの本来の役割だ。
ついでに、このシーンは、保守を自認している筈の安倍支持者たちからも殆ど批判されてないのが、ボクには理解できない。

最後に。おかしいと思ったことは徹底的に批判する。これは報道メディアだけの話ではない。
日本では、芸能人やスポーツ選手が社会的な発言を「無言の圧力」で封じられているが、海外では違う。
ということで、今回のトランプ訪日を徹底的に皮肉ったアメリカのテレビ番組の模様を最後にご紹介。
ほぼナイ!」では時間の関係でカットしたので、ごゆっくりどうぞ。
映像内に、日本でも紹介された「アメリカが一番でいいよな?よし、じゃあ、お前ら日本は二番だ。」というシーンも入っていて、アメリカ人もあきれている様子が見受けられる。
この映像はアメリカ制作なので、トランプ批判が中心だが、これを言われてヘラヘラ笑ってる安倍総理も、彼らには奇異に映っている筈だし、これを指摘するメディアが全くないのが、今の日本のメディアの異常さを象徴しているのではないか。

イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫