「ブラック芸能事務所」に公取委がメス:「干す」ヤツは誰だ?!(2018.2.28配信分レビュー:その3)

<大手芸能事務所にメスが入るでしょうか>
公正取引委員会シンボルマーク

公正取引委員会のシンボルマーク

公正取引委員会(公取委)が芸能事務所と所属タレント・スポーツ選手間の移籍制限などの不当な契約について、独禁法違反の可能性があると指摘する報告書を公表しました。

内閣府の外局として、独占禁止法(独禁法)の適正な運用を監視する公取委。
今回、公取委が一部の芸能事務所の独禁法違反の可能性を指摘する報告書を公表したという事は、一部の芸能事務所のやり方に「国が目をつけた」という事になります。
公取委は昨年、清水富美加さん、SMAP、江角マキコさん、安室奈美恵さんの事例や芸能事務所の日米比較など、詳細に一部芸能事務所の問題点を指摘した資料を公表するなど、一連の問題に対処する姿勢を見せていました

(以上 HEADLINE 2018.2.28)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.32)【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>

『ココがヘン!ニッポンのニュース:「ブラック芸能事務所」に公取委がメス:「干す」ヤツは誰だ?!

<参考:ビジネスジャーナル芸能事務所が辞めたタレントを干す行為、国が取り締まりへ…能年とローラの「異常な契約」

「ブラック芸能事務所」問題に国が動いた?!

ついに、というか、やっと、というか。
長年のタブーに、ついに公取委が動き出した。
ほぼナイ!」でも芸能問題は何度か取り上げてきた。SMAP、清水富美加、安室奈美恵、のん…
どの問題も、世間の注目度の高い人権問題であると同時に、大手メディアのタブー中のタブーの一つだし、だからこそ、ほぼナイ!」にふさわしいテーマ、と思ったから
そして今回、正式に公取委が動いた。公取委が動いたという事は、国が動いたという事だ。
「ブラック」と言われる大手芸能事務所も、そして何より大手メディアが、これで一連の問題をスルーすることが難しくなった。

といっても、これでほぼナイ!」で取り上げた芸能人たちの救済が自動的に行われるワケじゃない
自分の扱いが不当で、是正してほしい、救済してほしい、と思う芸能人は「個別に」訴訟を起こすなり、公取委に提訴するなりしなきゃいけない。
そんなことをする「勇気」のある芸能人がいったいどれくらいいるのか。
大手芸能事務所を敵に回して。芸能界で干されるかも、という恐怖を感じながら。

そう考えると、結局この問題の解決には程遠い、というのがボクの印象。
実際、芸能事務所側は今回の報告書を不当なもの、と主張しているようで、徹底抗戦の構えを崩してない。
当然かもしれないけど、自らの既得権益をそう簡単に手放すつもりはないようだ。
報告書程度で簡単に降参するようなら、既に自助努力でこの問題を是正できたはずだし。

カギを握るのは、結局「メディア」

以前のブログでも書いたけど、日本の芸能界はハリウッドのようにまともな 労働組合Labor Union もなく、多くの芸能人が労基法(労働基準法Labor Standards Act)とは無縁の世界で、事務所に圧倒的に有利な条件で働かされている。
ほんの一握りの超大物にでもならない限りは。
そんな状況に嫌気がさして、事務所から独立しようとしたらどうなるか、というと単純に、「干される」。メディア(特にテレビ)への露出が極端に減る。
と、ここまでは結構世間的に知られた話のような気もするけど、初耳だ、信じられない、という方のために、公的な資料をご紹介。
URLを見ればわかるように、ゴシップ好きの一般人が噂ベースで書いたものなんかじゃなく、政府機関のサーバーで公開されている資料です。
公正取引委員会独占禁止法をめぐる芸能界の諸問題(PDF) >

この問題が厄介なのは、「干される」、って点で、コレがなければ、結構この問題は簡単に片付く、とボクは思う。
だって、多くの芸能人が明らかに違法な環境で事務所に働かされているのは明らかなわけで、訴えれば確実に勝てるだろうし。
けど、ほとんどの芸能人は実際に声を上げてない。
それは、労基法の事とか独禁法の事とかを知らないから、という芸能人も中にはいるだろうけど、それより何より、「干される」のが怖いから。

それにしても、「干される」ってのも変なハナシで、本来芸能事務所は芸能人と現場の間に立って仕事を仲介する、まさに Agent代理人 の役割を果たすもので、実際そうだ。
だから、事務所はどんな大手でも自分で仕事をつくってるワケじゃないので、「干す」なんてことはできる筈がないし、できない。
できるのはせいぜい、サボる(ワザと芸能人に仕事を紹介しない)か、「アイツに仕事をさせるな」と言うくらいで、間接的な影響力しかない。

そんな状況で、芸能人にとっての最大の活躍の場であり仕事場はメディアで、特にテレビ。
つまり、大手芸能事務所が何を言おうと、メディアが毅然とした態度で芸能人を使い続ければ、「干される」なんて事態が起こる筈もないのだ。
でも、実際には、大手芸能事務所とモメて、その結果メディア(特に地上波のテレビ)から姿を消す芸能人は後を絶たない。
この問題は、芸能事務所と芸能人の問題、なんかじゃなく、ひとえにメディア(特にテレビ局)の問題で、メディアが大手芸能事務所とモメる芸能人を「なぜか」使わなくなった結果として、芸能人は「干される」のだ。

ここにもある「忖度」

芸能人が最も恐れる「干される」。どこから「干される」のかというと、メディアから「干される」のであって、「干す」側の当事者こそがメディアに他ならない。
では、なんでメディアは大手芸能事務所とモメる芸能人を「干す」のかというと、その大部分は大手芸能事務所に対する「忖度」だと言われている。

芸能人を自分たちに有利な条件(=芸能人に不利な条件)で使い続けたい大手芸能事務所は、芸能人の独立をなかなか認めたがらないし、万が一独立なんて言い出したら、「干すぞ」と脅す。
具体的には独立を画策する芸能人を使うな、とメディア(特に地上波テレビ局)に圧力をかけ、その事務所に所属する他の人気タレントを引き上げるぞ、と脅す。
本当に引き上げてしまうと、一番困るのは本来芸能事務所の筈だけど、実際には、人気タレントが使えなくなっては困る、とビビるメディア側が、結果的に事務所側の意に沿う形で、事務所とモメる芸能人を「干す」。
コレが「干す」のカラクリである。そこにあるのは、大手芸能事務所に対するメディアの「忖度」だ。

何のことはない、普段、コンプライアンスだ自由だ権利だと、建前をさんざん振りかざしている筈のメディアが、この非人道的な状況をつくっている当事者なのに、問題自体をほとんど報じず、いよいよ隠せなくなると、事務所と芸能人のモメ事のみをクローズアップし、さも他人事のようにハナシをすり替えてしまっているというのが、この問題の本質、というワケだ。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫

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