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『ココがヘン!ニッポンのニュース 特別編:特集『Dietとメディアのオイシイ関係』

<参考:ログミー人工甘味料は本当に体に悪い? 健康のために知っておきたい甘さの科学

ホントはどっち?! Artificial Sweetener の危険性

知ってるヒトは知っている、知らないヒトは知らない。
文字に起こすと「そんなの当たり前じゃん」的なハナシは世の中のいたるところにあるけど、今回注目したいのが、コレ。
Artificial Sweetener人工甘味料 とか Synthetic Sweetener合成甘味料 と呼ばれるもの。
砂糖がダイエットの天敵、というのはさすがに世の中の常識になっていると思うけど、ブーム、と呼ぶにはあまりに長期間続いている「ダイエット熱」の中で、砂糖が持つカロリーや糖質は完全に嫌われ者。
そんな中で、ダイエット志向の強い層に愛好されている多くのカロリーオフとか糖質オフをうたった食品に多く使われているのがこの Sweetener だ。
砂糖を使わない砂糖の代用品としての Sweetener は、恐らく世界では珍しい、食事に砂糖を多用する我が日本で食品の成分を調べると、アスパルテームとかスクラロースといった Artificial Sweetener の名前がバンバン出てくる。

ところでこの Artificial Sweetener、その中でもアスパルテームの危険性は一部の専門家などが以前から指摘していて、ネット上でアスパルテームをググって(検索して)みるとバンバン出てくる。
ところが困ったことに、このアスパルテーム、日本における安倍応援団と反安倍派のように、あるいはアメリカにおけるトランプ支持派と反トランプ派のように、見事に真っ二つに割れている。
ある人は危険だ、発がん性がある、と主張し、別の人は全く問題ない、危険と騒ぐ人は非科学的だ、と主張しているのだ。
一体どっちなんだ。断っておくけど、ボクは科学の専門家ではない。なので専門家ですら見解が分かれているアスパルテームやその他の Artificial Sweetener の危険性をジャッジすることなんか、当然できない。
ここで目的としてるのは、Artificial Sweetener の危険性を決めることじゃない。
僕がここでハッキリ断言できるのは、「専門家含め、Artificial Sweetener の危険性を断言できる人なんかいない」という事。
大体、アスパルテームが発見されたのは1960年代で、本格的に使われるようになって3~40年ほどしか経ってない。
そんな食品界のニューフェイスの評価、特に発がん性がどうした、なんてことを見極めるには、当然アスパルテームを日常的に摂取する人としない人を比較する必要があり、そうでなければ判断ができる筈もない。
一口食べたら即死、なんて猛毒でもないのだから、今専門家がやってる危険だ、安全だという論争も、結局は「科学的推測」をベースに行われているに過ぎない。
そして、往々にしてそうした「科学的推測」の結論は、ある日突然180度違ったものになったりする。

フェードアウトした「コカ・コーラ ライフ」

既に多くの人が忘れかけているであろうコーラがある。
コカ・コーラらしからぬルックスで数年前に店頭に並んでいた緑のコーラ、「コカ・コーラ ライフ」だ。
ほぼナイ!」でもご紹介したこの写真、見ても思い出せないヒトが多いかも。

コカ・コーラ ライフ

それくらい、あっさりとコカ・コーラの商品としては短期間で店頭からフェードアウトした、と思う。
今は日本全国どこを探しても売ってる店がないであろうこのコークは、とっくに生産中止となっている。
見るからにマズそう、という声が聞こえてきそうな気がしないでもないこのコーク、実は日本発の失敗作、ではない。
日本の店頭に並ぶ前から、本国アメリカで売られていたもので、ボクは日本発売が開始される一年位前にアメリカの店頭で並ぶこの奇妙なルックスのコーラの写真を見て、その存在を知った。
この緑のコーラ、実は本場アメリカでは結構期待されて登場したモノ。
日本ではおなじみの「ライト」や「ZERO」などのダイエット・コーク飲料は、アメリカにもいるコーラは飲みたいが砂糖やカロリーの摂取は控えたい、という層の支持を受けている。
特にアメリカの都市部では、日本以上にダイエットや健康に気を遣う層が多い。
でも、実は日本に比べるとアメリカでは「ライト」や「ZERO」の評判はそれほど良くはない。
その理由が Artificial Sweetener だ。ダイエット・コーク飲料には Artificial Sweetener が砂糖の代わりにたっぷり入っている。
そしてアメリカでは、日本に比べて圧倒的に Artificial Sweetener その中でもアスパルテームに対する意識が高い。
安全じゃない、入っていたら買わない、飲食しない、という意識が一般のアメリカ人には結構浸透しているそうだ。
そんなワケで「安心して飲めるダイエット・コーク」がアメリカの消費者に望まれた結果、砂糖はもちろん、Artificial Sweetener もゼロのコーク「コカ・コーラ ライフ」が登場した。
で、日本でもアメリカの好調なセールスを見て市場に投入してみたけど、日本の市場では思いっきりコケた。そしてフェードアウト…というのが大体の流れ。

まぁ、一応言っておくけど、所詮はコーラの話、ライフだろうが何だろうが、そんなに体にいいもんじゃない。
ただ、どうせ飲むなら少しでもマシなものを…ってのも人情。
で、ボクがこんな話を延々としてるのは、何も「コカ・コーラ ライフ」が飲みたいだけで言ってるんじゃない。
ここで注目すべきなのは、なぜ日本で「コカ・コーラ ライフ」がコケたのか、ということだ。

メディアの役割は「炎上」?!

なぜ日本で「コカ・コーラ ライフ」はコケたのか。
理由は簡単で、日本の消費者には、Artificial Sweetener つまり人工甘味料中でもアスパルテームに対する意識が圧倒的に低かったからだ。
人工甘味料ゼロのダイエット・コーク、なんて言われても、人工甘味料が危険な成分、という意識がない日本人にとって、「ライフ」はただの見慣れない奇妙なルックスのコークでしかなかった。
では、なぜ日本人は人工甘味料やアスパルテームに対する意識が低いのか。それはメディアのスタンスに原因がある、とボクは思う。
アメリカでは長年、一部のメディアが人工甘味料、中でもアスパルテームの危険性を大きく取り上げ、問題視してきた。
メディアが取り上げることで当然のように社会問題になり、大論争が巻き起こる。

一般の消費者の中にも知識が豊富な人や、極力リスクを回避すべきだし、企業にはその責任がある、という意識が高い人は、日米問わずいる。
日本語で「アスパルテーム」をググってみると、アメリカ同様、賛否両論が巻き起こっており、一般の消費者でも皆さんよく勉強されているのがわかる。
そこまでは日米同じ。何が違うかというと、この「アスパルテームは危険」というハナシが、テレビや新聞などの大手メディアに出てくるかどうかだ。
アメリカでは「一部の」メディアが火をつけ、メーカーは使用中止すべき、と火をつけた。
あくまでも「一部の」だ。アメリカのメディアの中にも「アスパルテームは安全」というメディアもある。
だから論争になるし、消費者(視聴者・読者)の意識も自然と高まる。
最初に言ったように、この「アスパルテーム論争」の結論は、結局出てない。
ただ、消費者の声に応えるカタチで、「コカ・コーラ ライフ」が登場し、ライバル企業のペプシもアスパルテームの使用中止を宣言、その他の食品メーカーにも追随する動きがある。

日本ではネット上の議論とは別に、アスパルテームの危険性が大手メディアで語られることは、ほとんどない。ボクの知る限り、ゼロだ。
ネットや専門書などで熱心に健康情報をチェックしたり、欧米の情報に触れる機会が多いヒトを除けば、アスパルテームが危険かも、と考える日本人はいないだろう。
こんな話はアスパルテーム以外にもある。例えばネオニコチノイド
最近ではネオニコチノイド系農薬の危険性が問題となり、さすがに先日テレビでも少し取り上げられたようだが、海外に比べてその動きは、遅く、小さい。
その結果、現時点で、世界各国が大きく規制の方向に舵を切っている一方で、日本だけがその動きに逆行している。規制の動きは皆無。

海外のメディアはこう言った話に極めて敏感で、素早い。
危険性があるかも、という時点で、断定しない形で積極的に報道する。
それに反論するメディアも出てくる。とにかくメディアが騒ぐことで、専門家も動くし、国も動く。
その結果、違っていれば訂正する。それを視聴者や読者も受け止める。
それが海外のメディアの役割だ。とにかく一回火をつける。「炎上」させる。それで視聴率や部数を稼ごう、という意図があるにせよ。

実は慎重なんかじゃない

その点、日本のメディアはおとなしい。危険性がある、となっても、100%の確証があって、他社が報じだして初めて動く。
間違えるのが嫌で、慎重に、いや、臆病になっている。日本社会は失敗や間違いに極めて厳しい。
確かに結構説得力がある。ような気がする。でも、実はそれだけではない。

日本のメディアはスポンサーに極端に弱い。更に強いところに弱い。政府や大企業、力のある所は徹底的に見て見ぬふりする。
特に日本のメディアは広告代理店に極端に弱い、ように見える。
このハナシはとっても長くなるので別の機会に譲るけど、海外のメディアでは、日本のように広告代理店(特に電通)が強い影響力を持ち、報道や番組の中身に介入するなんてコトはまずない。

欧米も日本も、メディアの影響力は大きい。特にテレビ。
以前、あるテレビ番組が納豆を食べると痩せる、と番組で放送したら、放送翌日、納豆がスーパーの店頭から消えた(売り切れた)、なんてこともあった。
それくらいテレビの影響力は大きい。腐ってもテレビ。

そんなメディアでは、長い年月をかけて、視聴者や読者に刷り込んできたイメージがある。
ダイエット、つまり痩せること=善、というイメージ。肥満が悪、じゃなくて、ダイエット、イコール、善。
医学的には不必要、どころか健康にはむしろ過度なダイエットはマイナス、という側面もあるのに、メディアの中でダイエット神話はどんどんデカくなっていった。

まだある。除菌・殺菌・抗菌神話。何の菌なのかもよくわからないけど、とにかく、除菌。殺菌。抗菌。
何の菌なのかもよくわからないのに、とにかく避ける。無くす。それが善。菌と名の付くものは全部、悪。
これもむしろ科学的にはマイナス面が指摘されているけど、圧倒的にメディアの世界では、神話の力が強い。
信じられないほどの、潔癖症、では済まされないレベルの方も結構おられるようで、その実態を見ると、もはや完全にメディアの被害者だ。

ダイエットにしろ菌にしろ、少なくとも様々なスタンスがあっていいはずで、メディアはそれを多角的に扱うべきだ。
でも、メディアの姿勢は完全に右へならえ。しかも、実は慎重とは程遠い、非科学的なイメージも垂れ流し。
一見、ダイエット産業やアンチ菌産業(?)重視のようにも見えるけど、実はそれよりも、そういった産業含め、代理店の意向を忖度してるだけのように、ボクには見える。
メディアにとって最もと言っていいくらい重要な、多様性Diversity というものが、極度に失われている。

いろんなところに話が飛んだけど、全ては日本のメディアに 多様性Diversity がないことに結局は行き着く。
たまには違うことを言うヤツがいてもいいじゃないか。とゆーか、いた方がいい。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫