G7、米朝会談で衝撃の事実続々明らかに:「外交の安倍」の実態とメディア(2018.6.27配信分レビュー:その1)
<何もしていなかったことが確定しました>
トランプ大統領の早退で幕が下りたG7に続き、歴史的な米朝会談が遂に実現しました。日本が最も注目していた拉致問題の進展はありませんでした。
「モリカケ」はじめ国内の相次ぐスキャンダルなど、停滞する内政に支持率も停滞気味の安倍内閣にとって、外交の一大イベントであるG7は、支持率アップにも重要な舞台と見られていました。
また、G7以上に世界的な注目を集めたのが、一時は開催中止が危ぶまれたG7直後の米朝会談。
最大の懸案事項であった北朝鮮の核兵器について、具体的な成果がないとの批判もある一方、差し当たり米朝両国が軍事的に衝突するという最悪のシナリオは避けられたとの見方が大勢で、そこは評価に値するとの声もあります。
一方で、G7前から安倍総理がトランプ大統領に直談判するなど積極的に動いていた拉致問題については、具体的な進展は日本政府から明らかにされていません。
(以上 HEADLINE 2018.6.27)
< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.35):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>
『ココがヘン!ニッポンのニュース:G7、米朝会談で衝撃の事実続々明らかに:「外交の安倍」の実態とメディア』
<参考:THE PAGE(ザ・ページ)> 米朝会談とG7のあと…。政権益と国益、トランプ大統領と安倍首相の位置づけ
相変わらずピントがずれている
G7、そして直後の米朝首脳会談と、国際的なビッグイベントが終わった。
この手の国際的な政治的イベントは国内の様々な政治イベントと違って国民やメディアのチェックが機能しにくいこともあり、当事者(参加国政府)自身の過剰なアピールが目立ったり、各国政府の自分勝手な解釈が行われたりすることが多い。
なので、メディアにおける評価も国内問題以上に分かれることになり、国民もその解釈が非常に難しくなる。
そんな中、もはや恒例と言っていい日本の報道(記者クラブメディア)の「暴走」が、またも目立つこととなった。
日本のメディアは基本的に政府の発表をそのまま流していて、他国の政府が流す情報との違いをチェックする、なんてことは当然のようにやってない。
そうすると、結果的に日本のメディアは日本政府に都合のいい情報を流してしまうことになる。
政府の流す情報には、その政府に都合のいい「スピン」が何かしらかかっている、つまり100%正確な情報じゃない、という他国のメディアにとっては当たり前の前提を日本のメディアは一切考えてないので、結果的に政府の流してほしい情報を流すことになる。
今回だと、北朝鮮の核と並んで最大の焦点は拉致問題だ→トランプ大統領をいかに安倍総理が説得できるかがカギだ、などという、トンデモ話がバンバン飛び交うことになる。
他国のメディアを見ていると、明らかに焦点は北朝鮮の核兵器であり、更にG7に関して言えば、貿易問題におけるアメリカの「ワガママ」をいかに抑えるか、更には海洋プラスティック(海に捨てられ溜まっていくプラスティックゴミ)の問題を抑える対策(海洋プラスティック憲章:Ocean Plastics Charter)をG7各国で合意できるか、が焦点だったが、海洋プラスティックの問題に関しては、日本のメディアは事前に取り上げることはほとんどなかった。
記者クラブの「力技」は通用したか
もちろん日本一国だけ実態とは異なる報道を繰り返したところで、世界に影響を与えることなどできる筈もなく、日本以外のメディアが事前に伝えていたように、G7での主要なテーマはアメリカとEUの貿易問題だったし、海洋プラスティック問題だった。
さすがに一部の日本の識者の中には、貿易や海洋プラスティックがG7の焦点だ、と事前に指摘する方もおられたが、メディアの中では参考程度に紹介されている程度の扱いだったように思う。
勝手に自分たちでシナリオを書いて、そこに報道を無理やり合わせようとすると、往々にしてこういうことになる。
更に米朝会談についての報道は、北の核と金体制の維持が焦点であることはさすがに伝えられていたものの、日本の報道の力点は、如何にトランプに拉致問題をねじ込ませるかという、日本以外のメディアが全く見向きもしていない点に置かれるという、例によって世界の報道とはあまりにかけ離れたモノに終始した。
相変わらず記者クラブメディアの報道は、ねつ造、とまではいかなくても、報道のバランスが著しく現実とは異なるものを押し通す、という「力技」に終始した。
断っておくけど、ボクは拉致問題に関心が全くないわけでもなければ、問題の解決を望んでないわけでもない。
だけど、米朝のサシの会談に日本と北朝鮮の問題である拉致問題を持ち込むこと自体不自然だし、ましてや北としてはなるべく避けたいであろう拉致問題をトランプが持ち出すことは、北がヘソを曲げて会談全体をブチ壊しにする可能性すらあり、会談の焦点と考えるにはあまりにムリがある。
実際、日本のメディアもさすがにそんなことはわかっていたワケで、だからこそ如何に「ねじ込むか」が焦点で、安倍総理がこの至難の技を成し遂げるかが見ものだ、などと、トンデモないハナシになっていくしかなったワケだ。
一方、北も「トランプ経由で拉致問題をねじ込みたい」という日本政府の意図など百も承知なワケで、会談の前に北が拘束していた米国人3名をさっさとアメリカ側に返すことで、トランプが人権問題を持ち出す必要性をなくしてしまっておく、という先手を打ってきていた。
米朝間で最大の人権問題と言われていたこの3名の米国人の問題をさっさと解決させておけば、トランプも会談自体をブチ壊すリスクを負う必要性はなくなる。
なのでトランプは拉致問題については「シンゾーとうまくやってくれよ」とサラッと触れるくらいの事で十分だし、金正恩も無理にアメリカと拉致でモメる必要はないわけで、適当に受け流しておけばいいだけのハナシだったろう。
記者クラブメディアが犯した「大罪」とは
そして、当然のようにG7と米朝会談は、日本のメディアが「焦点」にしていたことなどほとんど注目されることもないまま終わった。
海外のメディアもG7については、トランプがEU側と妥協しようなどという殊勝な態度に出ることもなく、ひたすらドイツのメルケル首相らと対立したことを一斉に報道し、トランプ批判に終始した。
更にトランプはG7の会合を最後のセレモニーまで付き合うことなく「早退」し、更に会合後に公表される各国間の合意内容にいちゃもんをつけた上で “I have instructed our U.S. Reps not to endorse the Communique as we look at Tariffs on automobiles flooding the U.S. Market!” とツイート、「(トランプの後を引き継ぐ形になった)アメリカの担当者に、最終合意に署名しないよう指示した」と明かした。
だったら早退せずに最後まで残ってとことんやりあったら良かったじゃないか、というハナシだけど。
その一方で、G7の成果が「EU側(特にメルケル)とバチバチやりあっただけでした、終わり。」では反トランプのメディアに「アイツはケンカしに行っただけだ」と批判されるのは目に見えているので、反トランプメディアがトランプとメルケルが険悪な空気を出しまくる写真を流しまくる中で、トランプ側はメルケルとトランプが割と和やかな雰囲気で写っている写真を流した。
もちろんこれも「スピン」なワケだが、反トランプの欧米メディアはこれを「トランプ側のスピン。常套手段だ。」と受け流している。
さすが、向こう(海外)のメディアは「分かっている」のだ。
こうした米政府とメディアの攻防を、実は日本の一部メディア(テレビ東京系列のメディア)が報道していた。
興味深いし、良い分析だと思うけど、だったらその分析力をなぜ日本政府に対して発揮しない?
日本政府は善人の集まりで、「スピン」なんか絶対かけない、とでも思っているのだろうか。
ある意味何も触れず、わかってないように振舞う他のメディアより、よりタチが悪いとも言える。
さて、長くなったけど、やっと本題。
「ほぼナイ!」配信時に言ったように、今回のG7と米朝会談で大変なことが2つ明らかになった。
そして、この2つは例によって、記者クラブメディアは全く報じていない。
1つは、EU各国が出してきた海洋プラスチックの抑制案に対し、日本とアメリカだけが反対し、ヨーロッパのメディアで日本がバッシングにあっていること。
G7後の海外メディアの取材で、トランプが “then, it’s five versus two.(よし、これで5対2だ。)” と。G7の場で発言したことが明らかになっている。
「オレは一人じゃない、シンゾーがいる」というワケで、つまり、日本はオレの言いなりだ、と自慢(?)されてるようにも取れる。
事前に一部メディアが「安倍首相がトランプの暴走をどこまで止めるか」と言っていたし、実は一部海外メディアもあきらめ半分で「もしかしたら安倍首相が…」なんて話もあったが、期待する人を間違えてる、といったところか。
もう1つ、こっちはもっと衝撃的(?)だ。
米朝会談。やはり拉致問題は何の進展も見られなかったようだ。
トランプがどこまで金委員長に「ねじ込んだ」のかは、結局わからずじまい。2者の会談だし、当然と言えば当然だ。
記者クラブメディアも、どうせその場にいない日本国民にはわかりゃしないんだし、適当にごまかせるだろう、と読んでの報道だったのかも。どこまでも凄いな、記者クラブ。
と思っていたら、なんと肝心の安倍総理や周辺が凄いコメントを一斉に「自白」しだした。
「拉致問題をトランプ大統領が提起してくれた。これは大きな一歩だ。トランプ大統領に感謝する。」
そして、記者クラブメディアは当然のように、こぞってこのコメントを報道、安倍総理の拉致問題に対する熱意がトランプを動かした、などと持ち上げた。
凄すぎる。安倍総理や周辺がこんなコメントを出す、とは全く予測していなかった。
これらのコメントをよく読んで欲しい。なんと「提起してくれた」だ。
安倍総理と言えば拉致問題、というくらい、総理は事あるごとに拉致問題を訴え続けてきた。
拉致問題と言えば安倍総理、安倍総理と言えば拉致問題、というくらい、強いイメージを持つ人も多いのではないかと思う。
その安倍総理が就任して5年以上、結局、拉致問題は何も動いていない、と安倍総理に批判的な声もあった。
実はボクもそう思ってきた。
けど、外交問題は相手があることだ。国民に一切知らされず、水面下で実は動いてました、という可能性もなくはない。
好意的に見れば、だけど。
なので結局は、安倍総理が辞めた時に結果を評価することしかできない、と思っていたら、今回の「爆弾発言」だ。
なんと、水面下の交渉はおろか、北朝鮮側に問題を提起すらしていなかった、と認めたようなものだ。
交渉するにも、提起せずにいきなり交渉などできる筈がないのだから。
「提起してくれた」と感謝しているという事は、素直に聞けばそうとしか聞こえない。
そうでなくても拉致問題について、米朝会談の直前に北朝鮮側が「(そもそも)日本は一切拉致問題について言ってきてない(のに周辺国にばかり拉致の話をする)」と日本政府に不信感丸出しのコメントを出している。
この北側の「証言」と併せて安倍総理達のコメントを聞けば、決まりと言っていいだろう。
早期解決、家族に時間は残されていない、とあれほど言いながら、肝心の北側に対して、一切何もアプローチしてなかったのだ。
こうなるとこう言うしかない。
「安倍内閣に拉致問題を解決する気はない」
これが言い過ぎなら「解決する能力はない」と言ってもいいけど、どっちにしても、結果は同じだ。
さんざん期待を持たされ続けた被害者家族のお気持ちを思うと、いたたまれない。
もしかすると、記者クラブメディアは(安倍内閣が拉致問題を放置しつつ、都合のいいように利用してきたことを)分かっていたのではないか。
(拉致問題が)動いていないことも、動く筈もないことも、動かす気配すらないことも。
そして多分(記者クラブは)分かっていたのだ。ボクよりはるかに近いところに居て、はるかに多くの情報を持っていた筈なのだから。
またも、記者クラブによる、不作為(ワザと何もしない)という名の「大罪」である。
イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫
“G7、米朝会談で衝撃の事実続々明らかに:「外交の安倍」の実態とメディア(2018.6.27配信分レビュー:その1)” に対して2件のコメントがあります。
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