ー ほぼナイ! HEAD LINE ー
<BTSに嫌悪感を表明しました>
寛容博物館

寛容博物館(写真:Wikipedia)

韓国の男性ヒップホップアイドルグループBTS(防弾少年団)のメンバーが過去にナチスを想起させる衣装を着たことや、長崎の原爆投下を肯定するようなTシャツを着たことについて、ユダヤ系人権団体が強い抗議を行いました。

今回、BTSのメンバー及び所属事務所に対して抗議を行ったのは、ロサンゼルスにある Museum of Tolerance寛容博物館 を運営する「Simon Wiesenthal Center (略称はSWC)」。
SWC は国際的に強い影響力を持ち、ホロコーストの記録保存と反ユダヤ主義への監視と抗議を主な活動目的としており、日本関係では過去に複数のメディアに対し抗議を行っている他にも、作詞家・プロデューサーの秋元康氏や麻生太郎副総理などに抗議を行っていることでも知られています。

(以上 HEADLINE 2018.11.28)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.40):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>

『ココがヘン!ニッポンのニュース:BTSにユダヤ系人権団体が猛抗議:絶対に「踏んではいけない地雷」

<参考:BuzzFeed NewsBTS、ナチス帽着用でユダヤ人権団体が嫌悪感 「日本の人々とナチズムの犠牲者に謝罪すべき」

世界で唯一「言論の自由」の対象外なモノ

アジアを飛び越えアメリカやイギリスなどのヒットチャートにも顔を出すなど、世界的に活躍する韓国のBTS。
急激に人気を獲得している彼らについては、別の話題で以前の「ほぼナイ!」でも取り上げたけど、ボクもこんなに早く「BTSネタ」を繰り返すことになるとは想像してなかった。
しかも前回はBTSはどっちかというと被害者的なカンジだったけど、今回はその逆。
加害者というか、やらかした方というか。
彼らが何を「やらかした」について、詳しくは参考ページに記載されているので、そちらをどうぞ。

で、この「やらかした」BTSに対してブチ切れたのが、今回の主役「SWC」。
この団体、とにかく国際的な影響力がハンパなく、今回に限らず、ナチスを肯定するような言動に対して、世界のあちこちでキレまくっている。
そしてそれ以上に、国際社会、中でもヨーロッパでナチスは完全なタブーであって、とにかく問答無用の「聖域」になっている。
「言論の自由」とか言っても、ナチスの存在意義や功罪の是非を議論することは対象外。
少しでもナチス寄りの言動をとった時点で、即アウト、となる。ダメなものはダメ。議論の余地なし。

だけど何を思ったか、時々この「聖域」に「踏み込んじゃった」日本人がいる。
それは時に政治家だったり、時に芸能人だったり、時に知識人だったり。
そして最後は例外なく、発言の撤回や謝罪に追い込まれる。
その時に決まって出てくる弁解が「そのような意図は全くなかった」というもの。
つまり日本人の中で、意図的にナチスを肯定しようという「ツワモノ」は誰一人出てきていない。少なくとも現時点では。
そして「そのような意図は全くなかった」というのは、多分本心なんだと思う。
そして、それは今回のBTS含む韓国社会も同様なんだろう。
そもそも、日本社会や韓国社会でナチスを肯定して得する事なんか一つもないし。
ナチスのやった事はユダヤ人の大量虐殺で、これを否定する歴史家は一人もいない。
肝心の欧米で、カルト的にナチス肯定論みたいなのが出てきたりすることもあるみたいだけど、社会の表舞台に出ることはないし、今後もないだろうと思う。
そうでないと、どんな理由があるとしても大量虐殺を認めることになっちゃうから。

だから、間違えてもナチスをちょっとでも認めるようなことを言うべきじゃないし、そもそもそう取られるような言動は絶対にやめるべき。
それが現在の国際社会のコンセンサス。
触らぬ神に祟りなし、ってことで。

「踏み込んじゃった」人々の共通点

そんなナチスというタブーに「踏み込んじゃった」日本人は、大体2パターンに分かれる。

まずは、芸能人に多い「無知・無自覚」型の人々。
そもそもナチスやヒトラー自体をほとんど、あるいは全く知らずに、あからさまにそれらを連想させる服装やポーズでメディア等に露出しちゃったケースなんかがが、そう。
日本人じゃないけど、今回のBTSもこのパターンの可能性が高い。
最近では、秋元康氏がプロデュースするアイドルグループ(欅坂46)のメンバーがライブにナチスの制服風の衣装で出演、SWCの謝罪要求を受けたニュースが話題になった。
因みに、この件では、さすがのSWCも当のメンバーに直接謝罪要求したのではなく、プロデューサーと所属レコード会社への謝罪要求だった。
メンバーたちがこの問題に無知であろうことは明らかで、それはSWC側も当然そう思ったのだろう。
抗議の対象となった秋元氏と所属レコード会社は、即座の謝罪に追い込まれている。

もう一つが「確信犯・知識ひけらかし」型の人々。
政治家や知識人、更にメディアなどがナチスなどを全く知らないということはあり得ないので、当然このケースに当てはまる。
この型に属する人々も、ナチスがいい、なんてもちろん思ってない筈。
それでも「踏み込んじゃった」のは、自分がナチスやヒトラーについて知っていることを、(無意識に)アピールしたかった、または自分の知識をさりげなく見せようとした過程で、勢い余った結果なのだろう。
多分、本人たちは否定するだろうけど、そうでなければわざわざ「ナチス」「ヒトラー」の名前を口にしなきゃいけないシチュエーションに日本人が遭遇する可能性がない筈だ。
繰り返すけど、触らぬ神に祟りなし。
それくらい(国際社会で)デリケートな問題なんだというコトを意識してなかったということで、逆に無知と言われても仕方がない。
最近このケースで話題になったのが、麻生副総理。麻生氏はご丁寧に、講演の中で憲法改正について触れた際の「ナチスの手口を学ぶべき」とド直球の発言で大問題になった。

この麻生氏の件では、この発言がナチスを肯定したのではなく、むしろ逆だった、前後の文脈をよく考えろ、などと麻生氏を擁護する声も一部のネットメディアなどで出てるけど、何を言っても意味がない。
麻生氏を擁護する人々は、まさかSWCを含むヨーロッパの人々が、わざわざ麻生氏の講演を隅から隅まで確認すると本気で思っているのだろうか。
問題になっているのは、政治家や知識人といった一定の影響力を持つ人が、不用意に「ナチス」「ヒトラー」を持ち出すこと自体を問題にしてるのだ。
「ナチス」「ヒトラー」に不用意に触れること自体、この問題を軽視していると見なされて、それを責められてるのだ。
因みに、この麻生氏の問題発言後、麻生氏は(氏にしては珍しく)発言を完全撤回、菅官房長官まで「安倍内閣はナチスを肯定する意図は一切ない」と釈明する事態に至った。
副総理という麻生氏のポジションを考えれば、官房長官の釈明=内閣全体の釈明、というのも当然だろう。
むしろ、変に麻生氏が(いつものように)粘って発言を撤回せず無視を決め込んでいたら、それこそ麻生氏の辞任や安倍内閣の倒閣までSWCが追い込んできた可能性は十分ある。
麻生氏が(氏にしては異例の速さで)発言を完全撤回したのも、それを感じ取ったからだろう。

「治外法権」な麻生副総理とメディア

麻生氏についてもう少し触れておくと、氏の問題発言はこれが最初じゃない。
もう挙げだしたら数え切れないほど問題発言を連発していて、その度にメディアが取り上げ、一部の支持層が擁護したりしながら、最後は何となくウヤムヤでフェードアウト、というのがお決まりのパターン。
良くも悪くも注目されたら勝ち、みたいな側面がある政治家にとって、むしろ麻生氏は問題発言の連発でトクをしてきた側面もあり、麻生氏も完全に「味を占めちゃってる」のかもしれない。

もちろん海外でも(結局は目立ちたい一心からか)政治家の問題発言はあるけど、ナチス含め「絶対に踏んではいけない地雷」は絶対に踏まない。
まさに「寸止め」である。
これに失敗した政治家は、国民やメディアから激しいバッシングにあい、まず確実に政治生命は断たれる。
どれだけ優秀だろうと、実績があろうと、失言する政治家は、即アウト。
もちろんその国の文化などの違いによって「絶対に踏んではいけない地雷」というのは少なからず違ったりするけど、それでもナチスのような世界共通の「地雷」は、ある。
それを踏んでも絶対に死なない稀有な政治家が麻生氏であり、世界的に見てもほぼ唯一と言っていい存在と言える。

過去の麻生氏の言動からして、いまだに政治生命が経たれてないのは奇跡と言っていい。
それを許してきたのは記者クラブメディアだ。
何のかんの言って、大物である麻生氏の失言を半ば面白がり、軽く批判してみせながらも、最後は見逃してきた。
麻生氏だけではない。過去には麻生氏以上に問題発言連発の政治家が何人もいた。
これも「ほぼナイ!」で何度も指摘してきた、記者クラブの弊害の一つだ。
自らの努力で情報を取ることを怠り、(大物)政治家から情報をもらい続けることで、その政治家をホンキで批判することができなくなる。
更に、自分たちの誤りや間違いをごまかし続けることで、政治家の誤りやごまかしも批判できなくなってしまう。

麻生氏のような「治外法権」な政治家を生み出してきたのは、間違いなく記者クラブメディアだ。
と、結局最後はいつもの結論に着地してしまった。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫