コンビニ大手「成人向け雑誌」相次ぎ販売中止へ:焦点は「成人向け」の線引き(2019.2.27配信分レビュー:その2)

ー ほぼナイ! HEAD LINE ー
<東京五輪にあわせた対応です>
コンビニ店頭に並ぶ成人向け雑誌

コンビニ店頭に並ぶ成人向け雑誌(写真:AFP/GETTY IMAGES)

セブンイレブンとローソンが8月末までに成人向け雑誌の原則販売中止を表明したのに続き、ファミリーマートも同様の方針を表明しました。日本の大多数のコンビニから成人向け雑誌が消えることになる見込みです。

特に仕切りもなく、容易に子どもの目に触れる状況で置かれているコンビニ店頭の成人向け雑誌は、日本の街中にあふれるポルノの象徴として、相当数の訪日外国人などから批判や疑問の声が上がっていました。
近年の訪日外国人客の増加に加え、今年から来年にかけて東京五輪などの国際的な大型イベントも控えており、コンビニ3社も販売中止の理由の一つとして、今後の更なる訪日外国人の増加に配慮したことを挙げています。

(以上 HEADLINE 2019.2.27)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.43):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>

『ココがヘン!ニッポンのニュース:コンビニ大手「成人向け雑誌」相次ぎ販売中止へ:焦点は「成人向け」の線引き

<参考:KAI-YOU.net(カイユウ)「成人向け雑誌」販売中止、コンビニ3社と評論家を直撃 議論すべき課題とは

いかにも「日本的」なコンビニ大手3社の発表

過去の「ほぼナイ!」では今回のコンビニの書籍コーナー問題や関連する話題(韓国男性ヒップホップグループに提供の秋元康氏楽曲が発売中止:ネットでも語られない「真の理由」(2018.9.26配信分レビュー:その3)の中盤から後半にかけて)で、日本社会が海外では考えられない状況にあることも含めて取り上げてきた。
そして、ついにコンビニが動いた。
これまでにも、一部のコンビニが地域の条例や地方自治体の要請などに対応したり、また、一部店舗が店長独自の判断で、いわゆる「成人向け雑誌」の販売をやめるケースはあったけど、今回は大手3社が揃って全店舗での販売中止を決めたのだから、明らかにレベルの違う「英断」と言っていいと思う。

にしても、セブンとローソン、ファミマのコンビニ大手3社が見事なほど同時(セブンとローソンが同じ日、ファミマがその翌日に記者発表)に同じ発表をする、というのは、いかにも横並びの好きな日本社会を象徴するような光景だ。
あまりにも見事なタイミングなので、各社が独自に決めたのではなく、上から(例えば政府とか)のプレッシャーがかかってイヤイヤ発表したのでは、という憶測も当然のように出ている。
もちろん真相は当事者以外は分からないし、そこを一生懸命深掘りするメディアやジャーナリストもいないので、真相は闇の中だ。
この「プレッシャー説」の他に、そもそもコンビニ側が積極的な「経営判断」で販売中止を決めたのではないかという説もある。
コンビニで、いや、コンビニだけじゃないけど、雑誌を含む本の売り上げは順調(?)に減少している。早い話が、本が売れなくなっている。
あまりに売れないので、雑誌にはここ数年、豪華な付録をつけるのがブームになってるようで、付録目当てに雑誌を買う人も多く、もはや何を売ってるんだかわからない状況になってきている。
それほど、雑誌(を含む書籍)は売れない。
活字離れが原因じゃないかという説もあるけど、写真などが主体の雑誌も厳しい、となると、理由はそれだけじゃなく、恐らくネットの普及が原因じゃないか、という分析もある。
本や雑誌がウェブやSNSに置き換わってきたのだ、ということらしい。説得力がある分析だ。
いずれにしても、コンビニの店頭で、成人向け雑誌は「場所は取るけどそんなに売れない」存在になってきている。
と思ってたら、外野から「子供の教育上よくない」「海外ではあり得ない現象」と批判が増えてきた。
東京五輪やラグビーのW杯などの訪日外国人増加要因も目白押しだ。じゃあ止めよう、という判断は、極めて合理的に感じる。

問題は「成人向け」の基準

理由はさておき、コンビニから成人向け雑誌が消える。これは決定事項だ。
ただ、この問題、実はまだまだ終わってない、とボクは思う。
そして、今夏以降に全国のコンビニを訪れた訪日外国人客は「日本は凄い国だ」と驚く、という現象は多分続くと思う。悪い意味で。

問題は、誰が見ても明らかに「成人向け」の雑誌、つまりコンビニ側が立ち読みできないように封などがしてある雑誌じゃない。
封がしていない雑誌、つまりコンビニ側が「子供には見せない方がいい雑誌」という認識を持ってない雑誌も、訪日外国人からすると十分衝撃的な雑誌は多い。
具体的には、いわゆる女性アイドルなどが水着姿でにこやかにポーズをとっている写真が表紙を飾る雑誌。
マンガ雑誌とかクルマの雑誌とかが多いようだけど、こういう雑誌は一般的に「成人向け」とは言わないと思う。
だけど、こういう雑誌も多くの訪日外国人にとっては「エロ本を子どもの目に触れるカタチで堂々と売っている」と見えてしまうらしい。
中身はただの健全なマンガやクルマやファッションの情報だ、と言っても意味がない。
当然ながら彼ら(訪日外国人)の大多数は、雑誌の中身を読まないし、表紙のタイトルすら、読まない。とゆーか、読めない。だって日本語だもの。
なので表紙の写真だけで判断するしかない。となると、普通街中ではしない格好で写っている若い女性の写真を見て、どう思うかは十分想像がつく。
いや、もしかしたら、その想像もつかないかもしれない。それを世界にさらしてしまった一人が、作詞家の秋元康氏だ。

以前「ほぼナイ!」でも秋元氏のエピソードは紹介した。
CNNのインタビューを受けた秋元氏、恐らくAKBの成功がアメリカ(CNN)にも注目されたと勘違いして嬉々として取材に応じたんだろうけど、実際は見事に違った。
インタビュアー(因みに女性)がAKBのメンバーが水着(下着?)姿ではしゃぐPVなどについて「(若い女性の)性的搾取に関与していると思わないのか?」と訊かれ、とゆーか責められたのに対し、「あれはアートだ」という、多分AKBのファンですら想像してないであろう衝撃的な答えを、うろたえ(ているようにボクには見えた)ながら口走る映像がCNNで実際に放送されたという事件が数年前にあった。

海外では、児童ポルノに非常に厳しい国が多く、その観点から、実は日本はかなり厳しく批判されている。
その理由の一つには、これは日本人に全く非も責任もないと思うけど、日本人は実年齢よりもかなり若く(幼く)見られるので、欧米人からするとAKBとかの女性アイドル達が水着的な衣装で露出している映像は児童ポルノにしか見えない、ということがある。
児童ポルノがなぜ批判されるかというと、児童ポルノ=児童に対する(性的)搾取つまり幼児虐待という公式ができているから。
なので秋元氏は、CNNのインタビュアーからすると、日本で最も有名な児童売春の斡旋業者的な存在くらいにしか見えていなかった、ということで、責められるのは当然だったのかもしれない。

その一方で、ご存知の通り、秋元氏と言えば、日本の芸能界、メディア界では最も成功した「勝ち組」の一人であり、彼の手掛けるアイドル達が連日メディアを賑わせている。
しかし、それが「成人向け」のコンテンツだ、児童ポルノだ、となった時、「秋元系アイドル」をはじめとした(多分コンビニにとって稼ぎ口の一つになっている)未成年の水着女性を含むコンテンツ全てを排除する覚悟がコンビニ各社にあるかというと、ボクにはとてもそう思えない。
多分今夏以降も、「海外の基準からすると」かなり「ハレンチな」写真が表紙を飾る雑誌がコンビニの店頭に並ぶことになるだろう。
そしてその横を普通に歩いている子どもたちの姿を見て、結構な人数の訪日外国人は衝撃を受けることになる筈だ。

「海外の方が過激」は反論になってない

「日本のコンビニや街角に性的な写真や映像があふれて」いて「子どもや女性に対する配慮が足りない」と批判されている、といった話をすると、必ずと言っていいほど「海外の方が(性的に)過激なものが多い」とか「海外には性的にオープンな国も多いんじゃないのか」といった反論が出てくる。
一言でいうと、こうした反論は確かに間違ってないけど、そもそも議論の方向が間違っている。
海外で日本が叩かれている理由は、(海外の基準では)性的なモノが「街中にあふれていること」で「子どもの目に入りやすい」環境があって、それが放置されていることだ。
ポルノの内容が海外の方が過激だとか、そんなことは全くこの問題と関係ない。
要するに「そういうモノはオトナがこっそり楽しめばいいじゃないか」ということで「子どもに簡単に見せる(環境を放置する)のはダメ」というコト。
これは(性的に)オープンであることとも、違う。

更には、見たくない人は見なくて済む権利も守られれるべきで、特に一定数の女性が性的なコンテンツに嫌悪感を持つ「事実」もあるワケで、そういう人々に配慮する必要もある。
訪日外国人などの外国人に極めて評判が悪い代表例として「コンビニの成人向け雑誌」と並んで有名な「満員電車の中で堂々と見られるスポーツ紙や雑誌のエッチな写真」が、まさにコレに当たる。
クドいようだけど、その写真が海外のポルノほど過激じゃない、とかいう反論は、反論になってない。
家に帰って見ればいいだろ、なんで人前で堂々と見るんだ、子どもや女性の目にも入るんだぞ、というコト。

インバウンドで稼ぐ、ということ

最近、政府を含めやたらと好んで使われるのが、「インバウンドInbound」というコトバ。
昔からある英語だけど、最近日本で使われる「インバウンド」は厳密に言うと Inbound Tourist訪日外国人旅行者 のコトだし、もっと言うと Inbound Marketing訪日外国人向けのマーケティング を指してる、と思う。
要は、インバウンドで稼ぐぞ、というコトだ。

今回のコンビニ「成人向け雑誌」販売中止の理由も、インバウンドの増加にも配慮した、とコンビニ各社がはっきり明言している。
ということは、海外でさんざん批判されていることを知っていたということになるワケで、だったらなんで今まで放置してたのかってことになるけど、まぁそれはさておき。
今年のラグビーW杯に来年の東京五輪。
そうでなくても急激に増えている訪日外国人が、今後ますます増えると予想されている。
これをチャンスだ、稼ぐぞ、と本気で思うんだったら、訪日外国人客に気持ちよくカネを使ってもらう環境を用意しておかないと望むような成果は得られない。
となると、様々な面で海外の習慣・文化に日本の環境をあわせる必要がある。
そんな中で、大多数の訪日外国人が不快に思うようなモノを、反論にならないような反論を盾に放置し続けるとどうなるか、結果は火を見るより明らか。

幸か不幸か日本は海外で注目される存在とは必ずしも言えないので、悪評含め、まだそんなに知られていないハズ。
それがいざ日本に来てみたら、自国では御法度の児童ポルノまがい(と彼らには感じる)の画像や映像があふれている状況を目にしたら…
コンビニのバイトの店員に面と向かって激しく抗議・批判する人が続出しても不思議じゃない。
あるいは、コトバの問題から不満を持ったままおとなしく帰国してくれたとしても、帰国後にSNSとか周りの人々に、日本の(彼らからすると)衝撃的な実態を腹立ち紛れにぶちまける可能性は高い。
それが今後の日本にとってプラスかマイナスか、誰が考えても分かると思う。

そうでなくても、日本社会を知る外国人などの間では、日本社会には子どもや女性などの弱者に対する配慮に欠けている、という批判が多い。
特に日本政府は UNCRC (United Nations Convention on the Rights of the Child):子どもの権利条約 に批准しながら、様々な問題を放置している、と考える海外の識者も多い。
日本社会は児童ポルノの問題に疎い、という批判の中には、前に触れた通り、日本女性が若く見られることによる「誤解」もあるにはあるけど、それを訂正することは不可能だ。
相手に見えるモノをこちらで変えることはまず不可能だし、誤解を受けやすいなら特に気をつけるしかない。

こうした状況を広く知らせ、改善を促すのはメディアの仕事だけど、その肝心のメディアが、カネに目がくらんでいるのか率先して児童ポルノまがいのコンテンツをバラまいていることを考えると、この問題、結構改善するのは難しそうだ。
いや、そもそも自分たちのドル箱であるアイドル達の多くが、児童ポルノまがいの存在に見られている、なんて想像もしてないかも、と思うと、なかなか我が国の将来は暗い、と感じてしまう。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫

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