夫婦別姓訴訟で原告敗訴も控訴の見込み:日本に三権分立はあるか(2019.3.27配信分レビュー:その2)

ー ほぼナイ! HEAD LINE ー
<また違憲判決を避ける判断でした>
青野慶久サイボウズ社長

青野慶久サイボウズ社長(写真:サイボウズ公式サイト)

株式会社サイボウズの青野慶久社長が日本人同士の夫婦別姓を認めない戸籍法の違憲性を訴えた裁判で、東京地裁は25日、法の違憲性を認めない判決を下しました。青野社長は控訴の意思を表明しています。

グループウェア「サイボウズ Office」などで知られるITベンチャーのサイボウズ社。同社の青野社長は昨年以降、選択的夫婦別姓制度を求める訴訟の原告としても知られています。
2001年の婚姻時に妻側の性を選択して入籍した青野氏は、その後も旧姓の青野姓で活動していますが、「社長業で公式書類等に本名の記載を求められる機会が多く、著しく不便」として東京地裁に戸籍法の違憲性を訴える訴訟を起こしていました。
青野氏は判決後の記者会見で直ちに控訴する意思を表明し、最高裁まで争うとしています。

(以上 HEADLINE 2019.3.27)

※「ほぼナイ!」配信時は「民法の違憲性」としていましたが、正しくは「戸籍法の違憲性」ですので、本ブログでは記載内容を修正しております。

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.44:【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>

 

『ココがヘン!ニッポンのニュース:夫婦別姓訴訟で原告敗訴も控訴の見込み:日本に三権分立はあるか

<参考:ハフポスト「最高裁まで上がってこいというメッセージだ」青野慶久氏が控訴へ 夫婦別姓訴訟

実は「西端さん」だった青野社長

サイボウズの青野社長が昨年起こした裁判の判決が出た。
ITベンチャーの若手社長として知られていた青野社長が、いわゆる「ムコ養子」だったというのは、ボクは今回初めて知った。
青野、というのは「旧姓」で、戸籍上は西端さん、なんだそうで。
そして青野社長は前々から、「社長をやってると公的書類で本名を書く必要があり、普段は青野姓で通してきてるので、この使い分けを強いられるのは面倒この上ない」という趣旨の主張を展開してきた。

何を隠そう、企業のトップ、という点では青野社長とボクは一緒だ。ただし企業の規模があまりにも違い過ぎるので、一緒にしていいのか思いっきりためらわれるけど 😕
ついでに、なんと年齢まで同じ(1971年生)だと判明した。タメですよ、タメ。あちらの方が数カ月早いらしいけど。
ということで、同い年の社長繋がり(で愛媛出身)、ってヨシミもプラスしつつ、ボクは今回の青野社長の主張には全面的に賛成する。

そもそも「選択的」夫婦別姓とは、結婚したら必ずどっちかの名字に合わせないといけない、という日本人の常識を、「(名字を)変えたくないカップルは変えなくていいよ」ということにしてしまおう、というコト。
結婚の気配すらない独身のボクが言うのもナンだけど、夫婦別姓が実現すれば、まず確実に「結婚のハードル」が下がる。結婚しやすくなる。
青野社長のような仕事上の都合もさることながら、例えば一人っ子同士の婚姻とか、昔に比べて深刻度は低くなってるとは思うけど、跡取りがどーのとか、家系の断絶がどーのとか、考え得る「結婚のハードル」が多少でも低くできるなら、それに賭けるべき、というのが少なくとも政治の判断としては当然あるべきじゃないか。
ま、本気で少子化対策に取り組む気があるなら、ですけど。

それにしても、この「選択的」夫婦別姓について、特に消極的とゆーか批判的なのが一部の「いわゆる」保守系の政治家、というのはどうにも納得できない。
家族制度の崩壊がどーのとか、少子化が進んで肝心の日本人が絶滅したら制度もクソない、と思うんですけど。
一体何を保守したいんだか。

また避けられた「違憲判断」

ところで今回青野社長が起こしていた訴訟、過去に何度も起こされてきた、法律の違憲性を問うものの一つだった。
もちろん日本のあらゆる法の中で憲法の地位は最高。全ての法に優先し、憲法の下に各法律が作られる。
ハズなんだけど、実際憲法と各法律は別々につくられてるので、当然お互いが矛盾する内容になっているケースが存在する。
ってことで、この法律おかしいよね、憲法の趣旨と違うじゃん、という訴えが「法律の違憲性を問う訴訟」である。
これは、実際は日本だけじゃなく、世界の多くの国で同様のことが言える。ここまでは。

で、「法律の違憲性を問う」訴訟だけど、ここで日本と海外で別れる。
日本では実質「法律の違憲性を問う」訴訟はほぼ起こせない。
正確に言うと、仮に訴訟を起こしても、肝心の受け皿がない。
この「法律の違憲性を問う」ものを 司法審査(違憲立法審査権)Judicial Review と言って、コレを実際に行う機関として、ドイツなんかが有名だけど、憲法裁判所Constitutional Court という、ある法律が合憲かどうかを審査する専門の機関がある。
日本にはこの 憲法裁判所Constitutional Court がない。しかもご丁寧に 憲法裁判所Constitutional Court を新たにつくること自体が憲法で禁止されている。
司法審査(違憲立法審査権)Judicial Review は三権分立の原則で、立法や行政、つまり政治の暴走を止める、非常に重要な要素とされているにもかかわらず。

しょうがないので、日本では普通の裁判所に「法律の違憲性を問う」訴訟を起こすしかないんだけど、日本の裁判所は大体この手の訴訟は判断を避ける。
まぁ、考えてみれば日本らしいハナシだけど、法律の違憲性を指摘するような判決を出すということは、法律をつくった国会や行政にケンカを売ることになりかねない、と「忖度(そんたく)」しちゃってるのかもしれない。
ついでに言うと、司法審査(違憲立法審査権)Judicial Review に限らず、行政を訴えた裁判で、原告の勝率は極めて低い。
つまり被告側(国とか地方自治体の行政機関)が圧倒的に勝ちまくってる。
違憲性を問う判断はできるだけ避けられるし、逃げられない場合も行政側が有利な判決のオンパレード。

という日本の現状を普通に考えると、青野社長の闘いは、非常にキビしい。とゆーか、むしろ限りなく、ノーチャンス。
哀しい現実、というヤツで。

司法を変えられるキーマンは?

こんな司法の現状を変えられるのは、やっぱり「ほぼナイ!」でバカの一つ覚えのように言い続けている「記者クラブメディア」しかない。
ゴーン元会長の事件でも、日本の司法の異常さは海外メディアに散々取り上げられたけど、その最大の原因は、これまでの司法の異常さをほとんど伝えてこず、その結果日本国民はそれをほとんど知らされないままになってきたことにある。
なぜそうなるかと言えば、司法側が「記者クラブメディア」に対して都合の良い情報を流し、「記者クラブメディア」側もあえて司法側が開示しない部分を積極的に追及することなく、コントロールされた情報「のみ」を「事実」として報道してきたから。
更に、あえて「日の当たらない」部分を伝えようとする一部の記者クラブメディア」を取材現場から排除し、ジャマしてきたから。

今回の青野社長の件も、ほとんどのメディアが青野社長の主張などを十分に伝えているとは言い難いし、青野社長の主張を無視した司法の問題点(司法審査(違憲立法審査権)Judicial Review がない)を問うこともほとんどない。
どことなく「若手IT社長の道楽」が失敗した、みたいな、雑な扱いしか受けてない気がするのは、ボクの気のせいだろうか。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫

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