トランプ政権2年目に突入:意外にイケてる?!トランプ大統領(2018.1.24配信分レビュー:その1)
<2年目に突入しました>
トランプ政権は昨年の就任式が行われた1/20を超え、政権2年目に突入しました。国内外に強い批判の声がある一方、支持基盤は異例の底堅さを示しています。
“SITHOLE“発言に代表されるように、大統領、国のリーダーとしてあまりに品位に欠ける言動が目立つとして、国内外から非難され続けるトランプ大統領。
トランプ政権の米国内での調査会社各社による支持率調査では、30パーセント台と、歴代大統領の支持率としては最低水準となっています。
しかしその一方で、この低い支持率は昨年の大統領就任以降ほぼ変わらず推移しており、このことは支持者の間で根強い支持が一貫して続いていることを示しています。通常、就任後の大統領は徐々に支持率が下落する傾向がある中、支持率の下落率という点では歴代大統領の中でも屈指の数字であり、トランプ大統領は支持者がほとんど離れない「人気のある」大統領、という評価もできるのです。
(以上 HEADLINE 2018.1.24)
< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.31):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>
『ココがヘン!ニッポンのニュース:トランプ政権2年目に突入:意外にイケてる?!トランプ大統領』
<参考:BBC日本語版> あれから1年 トランプ氏に投票した人たちは今(動画)
2年目のスタートは「放送禁止用語」”SITHOLE”
良くも悪くも「相変わらず」のトランプ大統領。
率直、というコトバで評価するにはあまりにも下品で差別的な言動は、アンチの人々を刺激するには十分過ぎるほど。
そんなトランプ大統領の2年目は、中米やアフリカの途上国を指したと言われる “SITHOLE” 発言で幕を開けた。
直訳すれば「クソの穴」と言ったところで、とても国のリーダーが口にして許されるコトバじゃない。現地の報道番組では「ピー音」が入る放送禁止用語レベルの、いわゆるFワードだ。
もっともトランプ本人は例によって、彼ら(中米やアフリカからの難民)を差別的な表現で侮辱したりしてない、とこれも「フェイクニュース:Fake News」呼ばわりで、例によってメディアとトランプの泥仕合になっている。
この手の話は、テレビ中継でもされてない限り、証拠の音声でも出てこない以上は「言った言わないの水掛け論」で終わる。
こういったトランプの言動についての批判的な報道は、大統領就任前から続いており、その度に反トランプの人々は報道を信じてトランプ批判を繰り返し、一方のトランプ支持者はトランプの言う通り全ては「フェイクニュース」と信じて逆に大手メディアを批判するという、これまた相変わらずの展開が続いている。
トランプが最も恐れる “FIRE AND FURY” とは
そんなトランプ大統領の頭をもっとも悩ませている、と言われるのが “FIRE AND FURY” の出版だ。『炎と怒り』というタイトルのこの本、サブタイトルの “トランプ政権の内幕:INSIDE THE TRUMP WHITE HOUSE” とある通り、ダークホース扱いだった大統領選以降のトランプ自身と周辺の「迷走ぶり」を明かしたもの。
記者・コラムニストの Michael Wolff 氏がのべ200人以上の取材を元に書いたとされるこの本は、不正確な点も指摘されている一方、出版前にトランプが出版差し止めにしようとするなど発売前から話題となっており、発売1週間でミリオンセラーとなり、現在入手困難と言われるほど、全米大注目となっている。
この本に過剰とも思えるほど反応するトランプ。その最大の理由は、この本の最大の「功労者」が、つい最近までトランプの側近中の側近と言われてきたスティーブ・バノン氏と言われているから。
バノン氏の証言がこの本の主要部分を占めており、トランプや息子のトランプ・ジュニア氏、更には娘のイヴァンカ、娘婿のクシュナーと言ったトランプの身内を批判する内容が多数あるのだ。
バノン氏はジュニア氏やイヴァンカ、クシュナーを嫌っていたと言われていたが、この本の出版でそのことが裏付けられた、と言われている。
特に、イヴァンカ・クシュナー夫妻との対立がバノン氏をホワイトハウスから去らせる原因だったと言われており、そんなバノン氏の証言が元になっているこの本の信ぴょう性は高い、との評価になっている。
もちろんトランプはこの本の出版後、この本を徹底的に批判、トランプ支持者のほとんども「最大のフェイクニュース」とこの本を全く相手にしていない。
更にこの本憎しから、トランプは「バノンは正気を失っている」と、自分が本の中で精神異常者扱いされたことに引っ掛けてバノン氏批判も展開、アンチ・トランプの人々はトランプvsバノンの構図が明確になった、と捉えている。
ただ、バノン氏は出版後に本の正確性に疑問を唱え、更に「(本の取材に協力したことを)後悔している」「(私の)トランプ支持は揺るがない」と発言しており、トランプとバノン氏が完全に敵対した、とは言えない状況だが、この点は現地メディアではあまり取り上げられておらず、トランプ支持者は更に大手メディアに対する不信感を募らせるという、これまた「よくある光景」となっている。
「トランプがアメリカを分断した」は本当か
アメリカ社会が抱える問題を表す言葉として「分断:Division」がある。『トランプの登場がアメリカ社会に「分断」をもたらした』といった表現を毎日のように目にする。
確かにアメリカ社会は2つに分かれ、両者の対立は深刻な状況だ。
でも、この原因がトランプにある、というのは明らかに事実に反する。アメリカはトランプ登場のはるか前から「分断」していた。
実際、この「分断」はアメリカの深刻な問題だということで、ボクはトランプ登場のはるか前にこの「アメリカ社会の分断」をテーマにしたトークイベントをやっている。
因みにこのイベント開催時、アメリカは今回と同じく、連邦議会が当時のオバマ大統領(民主党)政権下で共和党が多数を占める「ねじれ状態」で政治が停滞した結果、連邦予算が通らず政府機能がマヒした。
国立の施設が軒並み機能停止する「政府閉鎖:Government Shutdown」に見舞われたのだ。
そう、今と全く一緒。大統領と連邦議会多数派の政党が入れ替わっただけだ。
強いて言えば、当時のオバマ大統領と比べると、トランプ大統領の方がコトバがストレート、というか露骨で身もフタもない表現をするので、「分断」がより深刻になった、ということはあるかもしれないけど。
- 民主(Democrats)vs 共和(Republican)の政治的分断(対立)
- 富裕層(Rich)vs 貧困層(Poor)の経済的分断(格差)
そして人種や宗教間の対立・差別、更にセクハラ(#MeToo)といった、互いの違いが和解や融和ではなく対立や憎悪を生む悪循環が、アメリカ社会が抱える最大の問題であり、それが「分断」という言葉に集約されている。
「分断」のメディア
「ほぼナイ!」で何度も取り上げてきたように、トランプ vs 現地大手メディアの対立は相変わらずだ。
大手メディアで言えば、保守系メディアの代表格であるFOXニュースを除き、大手新聞や放送局は完全に反トランプだ。
そして、この露骨なまでの反トランプぶりはトランプ支持層のメディア不信を助長し、大手メディアに対するトランプ支持層の信頼度は驚くほど低下していて、10パーセント台と低迷している。
トランプ支持者の8割以上が、テレビや新聞を信じない、と明言しているのだから、日本にいる我々からすると信じがたい状況だ。
一方、日本のメディアは相変わらず反トランプに軸を置いた報道を続けているようだ。
そもそも、今回紹介したようなトランプ支持者の声やトランプ政権に対する好意的な声はほとんど聞こえてこない。
最初に結論(トランプ=悪)ありきで報道内容を決めてしまって、それに沿った情報を流す、という記者クラブメディアの悪癖がモロに出てしまっている。
あるいは海外(特にアメリカ)の報道は海外の有力メディア(CNNやNewYorkTimes)の報道の受け売りという、これもまた悪いクセ、が思いっきり目立ってしまっている。
イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫