2017.07.26配信 ほぼナイ!HEADLINE その1 レビュー

<注目の身内にまで疑惑が拡がっています>
Jared Kushner

Kushner氏

一連の「ロシアゲートRussiagate」疑惑について、追及の手がトランプ大統領の娘婿と息子にも及んでおり、全米で連日大きく報道されています。

連日、野党やマスコミの厳しい追及を受けるトランプ大統領ですが、FBIの捜査対象になっていると現地メディアに報じられたことで、批判の矛先は大統領自身に加え、娘の Ivanka(イヴァンカ)の夫、娘婿の Kushner(クシュナー)氏にまで向けられつつあります。Kushner氏は大統領上級顧問Senior Advisor to the President としてトランプ政権の中枢におり、政権内で非常に強い影響力を持っているとされている人物です。

(以上 HEADLINE 2017.07.26)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.25)【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>


『ココがヘン!ニッポンのニュース:トランプ政権を揺さぶる「ロシアゲート」とは?

<参考:ニューズウィーク日本版> ロシア疑惑|ニューズウィーク日本版の記事まとめ

米国では相変わらず「トランプ劇場」が続いている。7月の現地アメリカの報道メディアでは、連日衝撃的な2つのワードが飛び交っていた。
それは「ロシアゲートRussiagate」と「弾劾Impeachment」だ。
わずか半年程度しか経っていない新大統領に対し、かつて米大統領が過去に一回だけ任期途中で辞めた時のスキャンダルである「ウォーターゲート事件Watergate scandal」をもじった呼称を使って、世紀の大スキャンダルが発覚したかのように騒いでいる。
因みにウォーターゲート事件は、当時の大統領選挙の際に、対立候補の本拠地である民主党本部のビルである、ウォーターゲート・ビルに盗聴器を仕掛けたりと、当選したニクソン大統領側がいろいろ不正を働いたという事件だ。その舞台となったビルの名前で呼ばれるようになったのが、ウォーターゲート。「ロシアゲート」はそのもじりだ。
弾劾Impeachment」というのは、平たく言えば政治家とかの、クビ。トランプはかつてテレビタレントみたいなこともやってて、その番組内で “YOU’RE FIRED!“(お前はクビだ!)という彼の有名な決めゼリフが知られてたのだが、今度は逆にメディアやアンチ・トランプの米国民から彼が “YOU’RE FIRED!” と言われてるのは、何とも皮肉だ。

で、「ロシアゲート」。要は大統領選挙の際に、ロシアと裏でツルんで、ロシアの力で大統領になった、と言われている疑惑だ。
何ともざっくりした説明だが、これは別に僕のせいじゃない。こんなざっくりした話しか、今(9月)になっても出てきてないのだ。具体的にトランプがアメリカ(国民)に対して、ロシアとの関係でどんな不利益をもたらしたのか、何もわかってないし、証拠もない。
わかってるのはトランプ陣営がロシアと友好的な(何らかの)関係があって、ロシアはヒラリーが嫌いでトランプに大統領になって欲しかった、ってことくらい。
そういうあるのかないのかよくわかんないハナシを、FBIやメディアなんかが必死で調べている、というのが7月の話。
そもそもこの手のスキャンダルは、そんな1カ月やそこらで決着するような話じゃない。ウォーターゲートも疑惑が持ち上がってから当時の
大統領ニクソンが辞任するまで約2年かかっている。
それ以前にトランプ政権の場合、現時点では証拠どころか、何があったのかすら具体的なハナシはなにも出てきてない「ロシアゲート」より、よっぽど具体的な問題が次から次に出てきてるので、メディアの注目は完全にロシアゲートから他のネタに移ってきている。

一方で、捜査機関はロシアゲートの捜査は淡々と、かどうかはわからないが、まぁ続けている。
その中で娘婿の Kushner氏は、捜査対象となったからか最近あまり派手に動き回ってはいない。
彼に対するメディアの注目度は一時期より下がっている。
そもそも「ほぼナイ!配信でも取り上げたように、Kushner氏はメディアにバンバン出るタイプではなく、肉声すらほとんど世に出ていない。
そりゃそうだ。彼は大統領じゃないし、政治家でもない。嫁の父親がいきなり大統領選に打って出て、下馬評を覆して当選し、あっという間に大統領の娘婿に「なってしまった」に過ぎない。
そっとしてあげて欲しい、とすら思うが、実際はそうもいかない。
彼は現在、大統領上級顧問Senior Advisor to the President の肩書で、トランプ政権内で多大な影響力を持っているのだ。
なんだか娘婿のわりに、義父(トランプ)の覚えもめでたく信頼を勝ち取っているようで、義父と折り合いが悪く居心地の悪いヒトにはうらやましい限りだろうが、話はそんなに単純じゃない。
実際 Kushner氏はアンチ・トランプから連日のバッシングを受けている。冷静な人からは多少の同情の声も上がっているが、多くはトランプと一緒くたにされて、トランプの問題行動の度に非難されたりするわけだ。

Ivanka_Trump

Ivanka氏

このある意味で理不尽な Kushner 批判は 娘(Kushner氏 の妻) Ivanka氏に対しても同様だ。
特にトランプは Ivanka氏の言うことはよく聞く、という話は有名で、そのせいでトランプの失態→止められなかった Ivanka氏への批判、という、彼女にとってはかなりツラい状況に陥っている。
出来の悪い父親を持つ悲哀、ということなのか。
当初は政治に関わる意思はない、とかいろいろ言われていたが、彼女も夫の Kushner氏同様、いつのまにか父親を公式に手助けすることになった。
彼女の現在の肩書は大統領補佐官Presidential Assistant である。
このように現在のトランプ政権は思いっきり身内に固められている。
トランプ自身のアクの強さからか、身内以外に政権のスタッフになりたがる人物が少ない、という事情もあるようなので仕方がないとも言えるが。

トランプと違って Ivanka氏は「いいヒト」キャラで、父親の評判が悪すぎるからか「Ivanka は良識的」という好意的な声も未だ根強い。ルックスがプラスに働いているとの声も。
これも「ほぼナイ!」配信で紹介したエピソードだが、シリア政府の毒ガス使用に苦しむシリアの子供たちの映像を見て心を痛めた Ivanka氏は、父トランプにシリア空爆を提言したそうだ。具体的に何と言ったかまでは明らかになっていないが、彼女の提言がトランプの決断に影響を与えたことはホワイトハウスが公式に認めている。
米軍のシリア空爆はアメリカ国内での支持も高く、トランプ政権の支持率も若干上昇したりした。当然 Ivanka氏に対しても目立った批判はされていない。

だが、考えてみれば、結果はともかく、空爆という重大な決定を娘の提案で決める大統領、というのはもの凄く問題が大きい。
様々な政策決定を娘婿が行っている、っていうのも、何か変じゃないか?
例えば同じく7月、G20に出席したトランプ大統領が首脳会議中に突然中座し、その席に同行していた Ivanka氏が代理で座り会議に途中参加、ということがあった。
このニュースは日本含め全世界で話題になり、アメリカ国内では、「彼女はいつから大統領になったのか?私たちは(大統領選挙で)Ivanka に投票したわけじゃない!」という批判の声も大きかった。
もっともな意見だ。
こうした身内で固められたトランプ政権は、縁故主義・依怙贔屓(えこひいき)Nepotism / Cronyism という言葉で批判されており、これも連日メディアで飛び交っている。
英語では NepotismCronyism は明確に分けられている。
Nepotism は(身びいきする対象が)身内や血縁者に限定され、Cronyism は血のつながりはないけど、近い人間関係が対象。例えば友人とか同僚とかばっかり重用することを意味する。

あと「ほぼナイ!」配信時には、ロシアゲート絡みで別の話(軍産複合体Military-Industrial Complex)もしたが、その話がその後(8月)、ボクの7月時点での想定を超えて更に進んでしまったので、レビューはその時(8月分)にまた詳しく。

 

イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫

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