安倍内閣が成し遂げてきたものと日本の政治報道(2017.08.30配信分レビュー:その2)

<「女性活躍」は放棄した模様です>
安倍総理大臣

安倍晋三首相

3日、第3次安倍第3次改造内閣が発足しました。総理自ら「仕事人内閣」と称する新内閣では、女性閣僚が大幅に減り、野田総務相と上川法相の2人となりました。

相次ぐスキャンダルで支持率の低下に歯止めがかからない安倍内閣は、支持率再浮上策の切り札として内閣改造に踏み切りました。大方の事前予想通り、支持率低下の要因の一つとされる稲田元防衛相ら「問題閣僚」を軒並み再登用せず、過去の大臣経験者を多く起用し、安定感を重視した閣僚人事となりました。
一方で、当初「一内閣一閣僚」を掲げ、閣僚の交代を極力控えるとしていた方針は転換され、安倍内閣の重要政策の一つとしていた「女性活躍」からは程遠い、わずか二人の女性閣僚起用にとどまるなど、内閣の当初の方針は完全に変更され、安倍内閣の苦しい現状を反映した組閣となりました。

以上 HEADLINE 2017.08.30)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.26):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>


『ココがヘン!ニッポンのニュース:安倍内閣が成し遂げてきたものと日本の政治報道

<参考:ニューズウィーク日本版> 安倍改憲シナリオ、支持率下落で自民内に異論 政権維持に解散も

レビューブログ、ということで、過去のほぼナイ!配信内容を振り返り、補足する目的なのがこのブログ。だが、レビューという性格上、配信後にしばらく経ってから各ブログなので、当然、配信時と書いている時とで時差ができる。ブログを書く時点では、既に配信時の内容は古くなっており、今更な感じのネタになってしまうこともある。今回はまさにそれだ。
特に政治の世界は動きが早い。内閣改造を改めて掘り下げようとしたら、これを書いている時点でなんと衆議院は解散、22日に総選挙だという。
しかも、内閣改造後で初の国会の冒頭で解散という、史上初の珍事となってしまった。「仕事師内閣」は「仕事”しない”閣」だった、と若干苦しいゴロ合わせが飛び交っているのは、メディアでもさんざん報道されている。

ところで、ほぼナイ!」配信時に紹介した『再チャレンジデフレ脱却『女性活躍一億総活躍地方創生人づくり革命』を覚えているだろうか。
これらは第二次安倍内閣発足以降、つまり安倍氏が総理の座に返り咲いて以降、内閣の重要政策として掲げられてきたもののキャッチフレーズ。
覚えてなくても問題ナシ。だって、この中で『再チャレンジ』以外は今でも担当閣僚が存在する。ずーっと。

つまり『再チャレンジ』以外は実現できてないので、持ち越しになってる、ということ。全く進んでないんだから、国民は覚えてなくて当然。だから問題ナシ。

『女性活躍』なんて全く進んでおらず、今度の内閣改造で、安倍内閣の女性閣僚はわずか二人になってしまった。どこが『女性活躍』なんだか。
強いて言えば、アッキーがモリカケで名誉園長だったことが明らかになったようなので、彼女は一人で「活躍」している。
彼女は閣僚じゃないけど、政府職員は閣僚並みにコキ使ってるし、ま、閣僚扱い、ってことで。
『デフレ脱却』に至っては、賃金は伸びない人も多い中、脱却し過ぎて一部の商品は物価が高騰、デフレよりさらにヒドいことになっている。
『一億総活躍』…少なくとも、ボクはそんなに活躍できてないけど…あ、ボクは残りの2500万の方なんだな、きっと。
あとは…もういいか。

唯一ポストがなくなった『再チャレンジ』にしても、大臣ポストがなくなった→政策目標は達成した、と仮定できるけど、特に世の中が『再チャレンジ』しやすくなったという印象はない。
あ、一つだけあった。肝心の安倍総理が一度総理を辞めてるから、そういう意味では今の安倍内閣自体が、まさに再チャレンジ内閣だ、とは言える。

以上、もちろん全てイヤミです。結局、何も進んでない。

このように、過去にどういう政策目標が掲げられ、どのように実行されようとしている(または、過去に実行された)か、というのは、過去から継続的に丁寧に分析していかねばならないけど、一般の国民はいちいちそんなことはできない。日々の生活に忙しいんだから。
だから、それを特に選挙期間中になるとなるべくコンパクトにまとめ、投票の際の適切な判断材料となるよう、国民にわかりやすく伝えるのが報道メディアの役目で、海外の多くのメディアはそれをやっている。
一方、日本の報道メディアは、どの党とどの党がくっついたの離れただの、A候補とB候補に~な因縁があって激しい選挙戦を繰り広げている、といったいわゆる「政局」報道が大多数を占める。
政策が語られことはあまりなく、挙句に番組の最後でMCが「もっと活発な政策論議を」などと判で押したようにまとめたりする。
アホらしい。それをしてないのはメディア自身である。
その背景には小難しい政策では数字(視聴率や販売部数)が取れない、と勝手に決めつけていることがあり、メディアは国民をバカにしている。
自分たちに政策の説明能力がないことを棚に上げて。

まぁあえてメディアの肩を持つと、日本の報道メディアが政局報道に偏るのは、もう一つの理由があって、それは政治家(や候補者)に政策の説明能力やディベート力が欠けていて、政治家たちに討論をさせると自己主張を繰り返すか、果ては罵倒合戦になって番組がちっとも建設的な方向に進まないので、番組や記事に政策を取り上げづらい、という事情も、あるにはある。
それでも、メディアにその気があれば、政策を取り上げることは十分可能な筈なんだけど。

そして、メディアに政策の分析能力が欠けているとどういうことになるかというと、まさか政治報道で政策ゼロってわけにもいかないので、政権(官僚)が出す政策説明をそのまま出すという、政権与党に大変都合がよい政治報道が繰り返されることになる。
日本の政治でまともな政権交代が起きづらいことの理由の一つに、こうした日本の報道メディアの存在があるんじゃないか、とボクは思う。

イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫

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