スポーツ界、芸能界でも続出する人種差別問題(2017.09.27配信分レビュー:その1)
<世界各地で人種間対立が噴出しています>
人種間の対立が全米各地で深刻化しています。NFLの試合前での抗議行動はじめ、米国外でも様々な人種間の対立と差別、抗議行動が拡がっています。
アメフトの世界最高峰のプロリーグ、NFLは全米で最も人気の高いプロスポーツリーグと言われており、全米のメディアが大きく取り上げています。
このNFLでは、試合開始直前に、国歌:National Anthem 斉唱があり、選手は起立し胸に片手をあて、アメリカ国歌に対する敬意を示すのがしきたりですが、一部の選手が国内で多発する黒人差別的な事件に抗議の意を示すため、国歌斉唱中にひざまずいたり手を他の選手と組むなどして、抗議の意を示す選手が何人も現れ、これをトランプ大統領が激しく非難することで、”Trump VS NFL“と現地メディアで大きく扱われており、国を二分する大議論が巻き起こっています。
(以上 HEADLINE 2017.09.27)
< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.27):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>
『ココがヘン!ニッポンのニュース:スポーツ界、芸能界でも続出する人種差別問題』
<参考:NFL JAPAN.COM> NFLチーム、選手らが国歌斉唱中に見せた“団結力”
アメリカだけでなく、ヨーロッパ各国で右派政党が躍進するなど、タブーとされてきた人種差別を隠さない風潮が世界各国で目立ってきている。
この傾向はスポーツ界や芸能界でも例外でなく、人種問題に関連する出来事が数多く報道されている。
アメフト人気のそれほど高くない日本ではなかなか想像できないかもしれないけど、アメフトというスポーツはアメリカ国内では圧倒的に人気がある。
世界ナンバーワンのスポーツと言われるサッカー人気は、ことアメリカ国内では全く歯が立たない。
それが証拠に、英語で “Football” と言えばサッカーの事だけど、アメリカではサッカーは “Soccer” 、”Football” と言えばアメフトを指す。
そんなNFLが、例年通り9月に開幕した今シーズンの開幕前からスポーツメディアはもちろん、一般のメディアでも物凄い注目を集めている。
大人気スポーツNFLは、ルールが若干複雑なこともあり、特に女性人気はイマイチとされており、ダンナがTV中継やスポーツニュースに夢中でシーズン中は一切かまってもらえないという奥様方が「フットボール未亡人:Football Widow」なんて呼ばれたりするくらいだけど、そんな女性でも “Trump VS NFL” のバトルは知っている人が多いようだ。
事の発端は、昨年の「ほぼナイ!」でも紹介した、当時NFLの名門チーム49ersの司令塔、Colin Kaepernick 選手の事件。
警察による黒人の不当な扱いに抗議する彼が、昨年のプレシーズンゲームの試合前の国歌斉唱中に両腕を組んでひざまずくことで米国社会への不満を表明、大きな反響を呼んだ。
彼の行為には賛同も示され追随する選手も出る一方、白人ファンの一人が彼の ユニフォーム:Jersey を燃やす模様を撮影した動画をネット上に公開、衝撃の映像が全米に拡散された。
ファンを裏切る形でチームを移籍したり、大舞台で活躍できなかった選手の ユニフォーム:Jersey を怒り狂ったファンが燃やす、って話は過去にもあったけど、そうじゃない Kaepernick(のユニフォーム)がそんな目にあうというのは異例中の異例。
しかも、この Kaepernick は故障明け(でもシーズン中は回復していた)ということもあってか、試合に使われることは一度もなく、このことも賛否両論が巻き起こった。
選手起用はコーチ陣の判断だし、戦術面とかいろんな要素があるので、彼が昨年、チームから不当な扱いを受けたと決めつけることはできないかもしれない。
ボクは一人のNFLファンとして、彼は昨年スタメンに戻るべきだった、と思うけど。ま、これは一ファンの戯言。
ところが彼は昨シーズン終了後、なんとチームを解雇され、その他の29チームのどこも手を出さず、現在も無職、という状態が続いている。
彼は、ただでさえケガが絶えず常に人材不足のNFL、その中でもQBという試合中一人しかプレーできないチームで最も重要なポジションで、リーグ内で一昨年までスター選手として活躍していた。
それが一年で、スタメン落ち→解雇→どのチームも獲得せず無職状態、という立場に追い込まれたのだ。ありえないでしょ、コレは。
で、この異常事態に明日は我が身と思ったか、今シーズンに入って試合前の抗議行動に追随する選手が続出、これに内政でキビしい状態が続いているトランプが Spin Control の一環として例の “YOU’RE FIRED!“(お前はクビだ!)で更に騒動を拡大させ、これに怒ったNFL側が遂にチーム一丸で抗議するケースまで出て、さすがにマズいと思ったトランプが今度は珍しく火消しに回る…とまぁ、イロイロあった。
というか、事態は終わっていない。黒人VS白人の構図は根深く、8月の Charlottesville での事件(参考:アメリカ・シャーロッツビルに白人至上主義者が集結 その背景と経緯、そして今後)とか、挙げだしたらキリがないほど、いろいろある。因みに失職中の Kaepernick は法廷闘争に持ち込み、徹底抗戦の構えを見せている。
一方、ハリウッドで近年問題になってるのが、”Whitewashing“。コレ、日本にはない概念なので、和訳はない。あえて言えば「白化」だけど、なんのことやら。
ハリウッドは特に リベラル:Liberal な考え方が主流なので、差別問題とかにはかなり敏感。
“Whitewashing” とは、本来有色人種がキャスティングされる役を、(人気のある)白人俳優に差し替えるコト。ハリウッドではタブーとされている。
直近の例として「ほぼナイ!」で取り上げたのが、イギリスのラッパーで俳優、Ed Skreinの件。白人の彼は自分からアジア人役を降板した。
それから日本絡みでいくと、映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』。日本のアニメ発のこの映画、主人公は日本人の草薙素子だけど、その役はスカーレット・ヨハンソンが演じ、これは上映済み。
因みにハリウッドの興行としてはコケたようだけど、“Whitewashing” と興行成績は多分、関係ない。
まぁ、“Whitewashing” の代表と言えば、マイケル・ジャクソンで間違いないけど、なんせこれは本人が自分にやってるので、批判もかなり限定的。
ついでにボクの好きな映画で言うと、『ラスト・エンペラー』も上映当時は “Whitewashing” という言葉自体なかったけど、最後の中国皇帝である溥儀役をジョン・ローンが演じてるのだから、思いっきり “Whitewashing” と言えなくもない。まぁ、『ラスト・エンペラー』は完全に突き抜けてて、そもそも中国人キャストも日本人キャストも思いっきり英語なので、“Whitewashing” 批判には当たらないかも。設定とか時代背景の問題を超えちゃってるので。
で、最後に日本の話。
そもそも日本ではスポーツ界にしても芸能界にしても、人種差別はもちろん、あらゆる社会問題に対して声を上げることが、ほぼ、ない。
日本社会がスポーツ選手や芸能人が声を上げることを、なぜかタブー視する傾向にあるようだ。こういう空気は他の先進国では、あまり例がない。
しかし、それでも声を上げている選手や芸能人はいる。例えば、脱原発を掲げる音楽フェス「NO NUKES」は2012年からほぼ毎年行われている。
何より、そういった声を伝えない、日本の大手メディアの異様さが目立つ。
一部の批判やスポンサーを「忖度」した、海外のジャーナリズムとはおよそかけ離れ、ガラパゴス化した自らの姿勢を、日本のメディアは今一度見直すべきだ。
イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫
“スポーツ界、芸能界でも続出する人種差別問題(2017.09.27配信分レビュー:その1)” に対して1件のコメントがあります。
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