2017.06.28配信 ほぼナイ!HEADLINE その1 レビュー

<政府とメディアが国連の指摘を黙殺しています>
高市早苗

高市総務大臣

国連特別報告者のDavid Kaye氏が公表した「言論と表現の自由」に関する対日調査報告書(案)について、高市総務相が6月2日午前の記者会見で遺憾の意を表明しました。

高市大臣は報告書について
「わが国の立場を丁寧に説明し、ケイ氏の求めに応じて説明文書を送り、事実把握をするよう求めていた。にもかかわらず、われわれの立場を反映していない報告書案を公表したのは大変、残念」
とコメントしています。

(以上 HEADLINE 2017.06.28)


『ココがヘン!ニッポンのニュース:2人の国連特別報告者を混同する日本の報道

<参考URL:産経ニュース> 【主張】

今回、2人の国連特別報告者special rapporteur が2つのレポートを出し、日本の国会でも取り上げられたし、上記のように日本のメディアでも取り上げられた。
「ほぼナイ!」配信でも取り上げたように、日本の報道や評論の多くは2人の報告者やレポートをごっちゃにしているようだけど、実際は2人は全くの別人であり、役割も違えばレポートの中身も違う。

Cannataci

Cannataci氏

テレビでテロ特措法(いわゆる共謀罪)を取り上げてるとき出てくる国連の特別報告者のレポート云々、と言ってるのは、大体Joseph Cannataci氏の(レポート)のことだ。このCannataci氏は国連が指名した人権問題の世界的権威で、今回の日本のテロ特措法案が世界的に見て、人権上の問題がある!と指摘して、日本政府に詳細な説明を求めたんだけど、日本政府は結局今になっても一切回答していない。<政府とメディアが国連の指摘を黙殺>というのはこのこと。

因みに、これも「ほぼナイ!」配信で話したけど、この件について、先日のG7サミットで安倍総理が国連のトップであるGuterres事務総長と会談した際に、Cannataci氏(とか他の特別報告者)は国連とは独立した存在だ、と言われた、とドヤ顔で菅官房長官が発表し、ニュースになっていた。つまり日本政府は「Cannataci氏は国連とは別に勝手に動いていて、個人の意見を述べているに過ぎない、だから日本のテロ特措法に国連がいちゃもんつけてきてる、なんてのは嘘だ」と言いたいのだろうが、これは事実ではない。国連事務総長が独立した存在、と説明したのは事実だが、この話には続きがあって、独立した存在だが、国連が指名した立派な専門家だから彼の言うことを尊重してほしい、という趣旨の発言もしている。
Cannataci氏が自由に活動できるようにするために、あえて敬意をもって独立した存在にしているということなのだ。もちろん日本政府がCannataci氏を無視していい、ということにはならない。
あと「ほぼナイ!」配信では、なんで日本政府は前半部分だけ発表したのか、それはワザと都合のいい話だけつまんだのかもしれないし、マジで安倍総理が前半部分だけしか事務総長の話を聞いてなかったのか、それはわかんない、って言ったけど、まぁ、そこはどーでもいいでしょう。
どっちにせよ、事務総長本人やその周辺に取材すれば、一発でわかる話なのだが、日本の大手メディアは(あえて)政府の発表しか聞いてないし、それをそのまま記事にした。いつものことだけど。

Kaye

Kaye氏

さて、やっと本筋。もう一人の特別報告者Special Rapporteur。それがDavid Kaye氏。報告の時期が被ったので、一部のメディアではKaye氏がテロ特措法を批判しているように報道していたメディアもあったが、これもウソ。Kaye氏は「言論の自由・表現の自由」の専門家で、彼が今回出したレポートは、日本の報道についてのものだ。テロ特措法とは別のものだ。
今回あえて参考として紹介している産経ニュースは、Kaye氏がCannataci氏と役割や専門分野が違うことは踏まえた上で記事を書いているように思う。

産経ニュース含めKaye氏のレポートについて取り上げたメディアは、総じて放送法第4条の問題点について指摘している。放送法第4条は放送の中立公正を定めたもの。以前「ほぼナイ!」でも取り上げた公平原則Fairness Doctrine だ。これを過剰に意識して、報道が委縮している、もっと自由な報道をすべき、というのがKaye氏の主張だ。
因みにアメリカはとっくに Fairness Doctrine を廃止している。神じゃあるまいし、公平中立なんてできない、というワケだ。日本もそうしたら?とKaye氏は言っていて、これに放送法を所管・監督する高市大臣が噛みついた、というのが今回のニュースだったのだけど、あーここまで長かった…

で、一番このニュースに対してボクが言いたかったこと。それは<政府とメディアが国連の指摘を黙殺しています>というHEADLINE。政府の話はもうしたけど、<メディアが国連の指摘を黙殺>とはどういうことか。実はKaye氏は放送法第4条以上に問題にしているものがある。それが「記者クラブ」だ。Kaye氏は日本の記者クラブ制度の存在こそが報道の自由の最大の障害だと言ってるのだが、日本の記者クラブ=大手メディアは軒並みそこをバッサリ落として4条の話しかしてない。

ついでに言うと、何度も「ほぼナイ!」で言ってるように、記者クラブはメディア側が自分たちの都合で作っているもの。
なので、記者クラブ云々について高市大臣とKaye氏は争う関係にない。これはKaye氏からメディアに突き付けられた、極めて重要な指摘なのだ。

ボクが<メディアが国連の指摘を黙殺>と言ってるのはそういう意味だ。こういうアンフェアな報道をやってることこそ、Kaye氏は問題だと言ってるワケだが、そこにいい加減気付けよ、記者クラブ!

 

イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫

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