韓国男性ヒップホップグループに提供の秋元康氏楽曲が発売中止:ネットでも語られない「真の理由」(2018.9.26配信分レビュー:その3)
<発売が中止されました>
韓国の男性ヒップホップグループBTS(防弾少年団)に秋元康氏が詩を提供した楽曲『Bird』の発売中止が、所属事務所から発表されました。韓国のファンの秋元氏に対する反発が原因と言われています。
共同通信の報道によると、BTSの所属事務所は22日までに、11月に発売予定だった秋元氏提供の歌詞を含む新曲『Bird』について
「収録曲が制作上の理由で変更される。不便をお掛けして申し訳ない」
と陳謝した上で、『Bird』の発売を中止し、別の楽曲に差し替えたシングルを発売すると発表しています。
日本を代表するヒットメーカーである秋元氏の歌詞と、世界進出を視野に活動を続け、日本でも認知度が高まっているBTSのコラボは発売前から話題になっていただけに、今回の発売中止の報道は、ネットメディアなどで大きく取り上げられ、BTSファンではない一般の日本人の間でも賛否両論が巻き起こっています。
(以上 HEADLINE 2018.9.26)
< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.38):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>
『ココがヘン!ニッポンのニュース:韓国男性ヒップホップグループに提供の秋元康氏楽曲が発売中止:ネットでも語られない「真の理由」』
<参考:リアルライブ> BTSの楽曲制作中止で韓国進出戦略が狂い始めた秋元康氏
「安倍政権寄り」強調するメディア
まず最初に断っておくけど、秋元氏の楽曲がどうのとか、ボクはほとんど興味がないし、そもそも良く知らない。
更に、BTSも今回初めて聞いた名前だし、なんで防弾少年団という名前があってニュース記事に併記してるものとしてないものがあるのか、というのもわからない。
それ以前に一度も彼らの楽曲を耳にしたことがない。しようとも思わない。
今回ボクが注目してるのは、このニュースに対する各メディアの取り上げ方と、受け止られ方だ。
まず、日本国内のメディアの報道はどれも似通っている。
特徴その1.特にテレビ業界にとって「大物」の秋元氏にとって恐らくネガティブと思われる報道なので、テレビメディアはネットメディア程取り上げていない。
特徴その2.韓国側でなぜ発売中止を求める声が上がっているか、の分析が、韓国側が指摘している問題点と違っている。
更に、報道を受けたネット上の反応も、特徴その2を受けて、当然と言えば当然の反応を見せている。ということで、
特徴その3.韓国国内で問題視されている二つの問題点について、国内メディアがスルーしている一点について、どのメディアもほとんど問題視していない。
日本の報道を見ていれば、ほとんどが今回の発売中止の理由について、韓国のファンが秋元氏に対して拒否反応を示している、と伝えている。
その上で、韓国のファンは秋元氏に対して「安倍政権に近く、極右だ」と「歌詞に女性の蔑視が含まれている」という二点を問題視している、と続く。
ところが、記事の字数の制限からか、「安倍政権寄り」のみを伝え、「女性蔑視」という点を省略しているメディアが結構ある。
更に「女性蔑視」を伝えるメディアもほぼ例外なく、秋元氏が「安倍政権寄り」「極右」だと韓国のファンが問題視して、抗議活動まで起きている、と大きく優先的に伝えている。
で、こうした日本のメディアの報道を受けたネット上の反応は、例によって「アンチ韓国」色の強いものが多い。
当然だ。メディアが強調しているのは「極右」「アンチ安倍」という、いわゆる「ネトウヨ」層に火をつけるには格好のキーワードだから。
因みに韓国のファンが問題にしているのは、秋元氏が過去にプロデュースするアイドルグループを靖国神社で公演させたり、メンバーの一部が靖国参拝した、といったことに加え、安倍総理と秋元氏が近しい関係にある、といったことで、こうした事が「極右」「安倍シンパ」批判の根拠になっているらしい。
韓国のファンがどこまで本気で秋元氏が「極右」だと信じてるのかはわかんないけど、批判が的外れなのは明らかだ。
日本の芸能界であれほど成功している秋元氏が、極右にしろ極左にしろ、政治的スタンスを表明することはあり得ない。
日本の芸能界、というかメディアは(中立という建前や反対派から抗議を恐れて)芸能人などの出演者が政治的スタンスを表明するのを極端に避ける。
なので、秋元氏の本音がどうかはともかく、彼がプロデュースするアイドル達に「極右」的言動をさせたりすることは、絶対にない。
韓国のファンは明らかにこの点で、誤解してるし、「極右」批判の根拠も、当然どれも弱いものばかりだ。
秋元氏が安倍総理に近い、というのは確かにそういうフシああるけど、少なくとも韓国のグループに結び付けるには、ちょっとムリがある。
韓国のファンが問題視する「もう一つの理由」
根拠があるんだかないんだかわからない「極右批判」なんかより、よっぽど問題にすべき点がある。
それが日本のメディアがほとんど取り上げていない「女性蔑視」だ。
これは韓国だけじゃなく、秋元氏がアイドル達に、性的な恰好(下着や水着といった露出度の高い服装)をさせたり、女性の存在が男性の性的欲望の対象になることが「善」で、それがさも女性の理想像であると誤解させるような表現が歌詞に含まれていることが、欧米各国で批判されたりしている。
しかも、秋元氏が手掛けるアイドル達は、10代前半~中盤の女性が中心であることも幼児虐待につながるという、日本ではまず耳にしない批判が、幼児虐待に極めて厳しいアメリカなどで真剣にされていたりする。
実際、過去にはCNNが秋元氏に直接インタビュー取材を行い、女性インタビュアーが「貴方(秋元氏)は未成年の女性に対する性的搾取に加担しているのではないか」と追及され、「そんなことはない、自分のやっていることはアートだ」と反論する、という事もあった。
匿名のツイッターだけど、このシーンの動画を含めた過去の秋元氏の言動まとめたものがあるので、ご紹介させていただく。
< moldさんのツイート:https://twitter.com/lautream/status/977513303856504832 >
繰り返すけど、欧米の幼児虐待に対する基準は、日本のそれに比べてはるかに厳しい。特に性的なものに関しては。
欧米だけじゃない。イスラム圏とか宗教上の理由で性的な規制が強い国とかから見ても、児童ポルノとかが平気でまかり通る日本社会は「野蛮な後進国」としか見えなかったりする。
そういった文脈から見ると、秋元氏の「アート」という反論は全く通用しない。
問題にされているのは、秋元氏が主張するように彼の作品・活動が「アートかワイセツかの基準」なんかじゃなく、「性的表現を10代前半の未成年に大人がさせることの是非」だ。
そして、日本以外の先進国の基準では、これは間違いなく「アウト」だ。
「ほぼナイ!」でも言ったけど、例えばコンビニという無制限に未成年が出入りできる場所に、公然と水着や下着姿の女性がほほ笑む写真が表紙になっている雑誌が陳列されている、というのは多くの外国人にとってはメチャメチャ Crazy:イカれた 光景で、この国はどうかしているという驚きの声は、多くの訪日外国人や在留外国人の間で上がっている。
こうしたことを考えると、韓国国内で、秋元氏批判や秋元氏の楽曲を断固拒否する、といった動きはメチャクチャもっともなハナシで、韓国のように儒教の影響が色濃く残る社会で、秋元氏の提示する世界観が到底受け入れられるものじゃないことは、容易に理解できる。
ということで、日本のメディアは今回の報道をする際に、まず「極右」がどーのこーの→また韓国が日本にイチャモン、といった的外れな報道をする前に、完全に日本社会が女性(特に未成年)の扱いについて完全にガラパゴス化していることをまず伝えなくちゃいけない。
「秋元康まるで女衒説」を検証する
「ほぼナイ!」では、伝わらなかったかもしれないので、パロディの解説、というカッコ悪い暴挙を敢えて。
『ほぼナイ! HEADLINE』でご紹介した「秋元康まるで女衒説」ってのは、もちろんパロディです、アノ番組の。ええ、そうです「水曜日」の、アレ。
ただ、「秋元康まるで女衒説」なんて説は、いくらTBSのスタッフでも、というかだからこそ、絶対に出せません。
大手メディアは「大物」秋元氏の批判は、絶対できない。
秋元氏に手を出すということは、彼の手掛ける、メディアにとってはドル箱のアイドル達を敵に回すことになるから。
そしてそれ以上に、メディアが今回のような女性蔑視・女児(の性的)虐待を批判しようものなら、それはもちろん「おまいう」ってことになる。
メディアがAKBグループとかの批判をしようものなら、じゃあ他のアイドル(グループ)はどうなんだ、ってことになる。
10代前半の少女が水着は着てないのか、歌詞に性的要素は一切含まれてないのか、その受け手の少年や大人は、そうした状況全体をどう受け取っているのか…
挙げだしたらキリがない。みんなAKBと、程度の差こそあれ、50歩100歩じゃないのか?
海外の基準から行けば、ほぼ例外なく「アウト」のアイドル達がメディアを埋め尽くしているんじゃないの?
以前にもこのブログで指摘したと思うけど、そもそも女性蔑視・セクハラの「総本山」は、(テレビ)メディアだ。
バラエティ番組はもちろん、そういった要素が排除されている筈の報道番組でも、女性蔑視やセクハラは蔓延している。
なぜ番組のアンカーは男性ばかりなのか。そのくせ、オマケのように横に配置されるのは、当たり前のように若い女子アナばかり。
最近少しずつ例外も出てきてるけど、実際に番組の実権を握るのは裏方も含めすべて男性だ。
そりゃそうだ。そもそもテレビ局の上層部が揃いも揃って「老害」をまき散らすオッサン(ジイサン)に占拠されているんだから。
これで女性蔑視がどーの、女性の働き方改革がどーの、と言っても何の説得力もない。
そんな連中による報道で、当然のように長年ドル箱であり続けている、スポットライトを浴びるステージを夢見るまさにいたいけな少女たちを食い物にしているメディアが、そのことが完全に世界の中でガラパゴス化していることに全く気付いてない。
実はホントの「女衒(今風に言えば売春あっせん業かな)」は秋元氏じゃなく、メディアだ。
たまたま一番成功して「しまった」秋元氏を今回は取り上げたけど、程度の差だけで他の少女アイドルビジネス関係者は同じ穴の狢だし、そういった人々に「寄生」して甘い汁を吸う、なんてメディアの存在は「女衒」の「パシリ」としか言いようがない。
最後に、あえて「女衒」というキツい表現を使ったのは、もちろん少女アイドル達を貶めることが目的なんかじゃないことは、はっきりさせておく。
ボクが言いたいのは、インバウンドだグローバル化だといいながら、いつまでも海外では通用しないビジネスモデル(未成年の女性をダシにして儲ける)に胡坐をかいているメディアは猛烈に反省すべき、ということだ。
あと、「グラビアアイドル」なんていう、これも「日本でしか通用しないビジネスモデル」についても、水着はOKだけどヌードになったらダメ、なんて完全にガラパゴスな発想だよ、というのも付け加えておく。
だからそれは、国際基準では程度問題でしかないんですって 😥
イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫
“韓国男性ヒップホップグループに提供の秋元康氏楽曲が発売中止:ネットでも語られない「真の理由」(2018.9.26配信分レビュー:その3)” に対して1件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。