<晴れ舞台で「喪服」着用となりました>
米TIME誌の表紙

米TIME誌の表紙

トランプ政権下での「#MeToo」運動が依然盛り上がりを見せる中、米ゴールデングローブ賞授賞式が現地時間の7日に開催され、出席者女性は黒のドレスに身を包む異例の式典となりました。

例年通りであれば女性の出席者は華やかなドレスで着飾る、映画・テレビドラマ関係者の晴れ舞台であるゴールデングローブ賞授賞式。
しかし、今年の授賞式は女性の出席者全員が黒のドレスを身にまとい、さながら葬儀の場を思い起こさせる風景となりました。
この黒のドレスは、昨年明らかになったハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ問題に代表される、ハリウッドに根強く残る男尊女卑の空気に抗議してのものです。
このようなセクハラ問題などの女性を軽視する風潮に抗議していこうとする女性たちによるネット上の運動「#MeToo」のきっかけとなったのが、セクハラ問題を告発するハリウッドの女性たちでした。
こうした女性たちの勇気ある行動は高く評価されており、昨年の米TIME誌で “Person of the Year(今年の人)” としてTIME誌の表紙を飾っています。

(以上 HEADLINE 2018.1.24)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.31)【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】>

『ココがヘン!ニッポンのニュース:黒ずくめのゴールデングローブ賞授賞式:「#MeToo」の動き止まらず

<参考:VOGUE JAPAN第75回ゴールデン・グローブ賞にみる、色と政治的運動の背景。

「喪に服した」ゴールデングローブ賞授賞式

ゴールデングローブ賞Golden Globe Awards(以下GGA)、といえば、米アカデミー賞(オスカー)に次ぐ、映画の賞としては歴史と権威のある賞だ。
監督や俳優など、ノミネートされること自体が大変な名誉で、世界的な評価を勝ち得たことになる。
因みに、日本人も過去に何度かノミネートされていて、女優の島田陽子さんがドラマで女優賞を獲得している。
最近では女優の菊地凛子さんが、ボクの大好きな映画『バベル:Babel』で助演女優賞にノミネートされた。
#その他、複数の邦画に外国語映画賞の受賞やノミネート歴がある。
ついでに、ボクの大好きな、といえばほぼナイ!」でも紹介した通り、教授(坂本龍一氏)は作曲賞を2度受賞、前回対象作の『レヴェナント:The Revenant』で3回目のノミネートを果たしている。

話がそれた。要はそれぐらい権威のある、映画・テレビドラマ関係者にとっては最高の晴れ舞台、それがGGA授賞式、ということだ。
その授賞式が、今年は景色が一変した。出てくる女性、出てくる女性、みんな判で押したように黒の衣装に身を包んで登場したのだ。
例年ならば、その衣装自体が話題になるほど、豪華できらびやかな衣装で登場してくるところを。
ボクは「喪服」と表現したが、黒の意味や出席者たちが黒のドレスに込めた意味については、ファッションに疎いボクより、専門であるファッション誌にお任せする。
参考ページとしてご紹介したVOGUEのページに、実に分かりやすい記事が載っている。
黒にはいろんな意味が込められているそうだ。

今回のGGA授賞式が脚光を浴びたもう一つの理由

今回のGGA授賞式は例年以上に現地で注目を集めた。その理由は出席女性たちが黒ずくめだっただけではない。
実は政治的に物凄い「事件」が起こったのが、そのもう一つの理由。
それはこのページを見ればわかる。ということで、ほぼナイ!」でお約束したページをご紹介する。

【全文公開】オプラ・ウィンフリーが第75回ゴールデングローブ賞で3回称賛されたスピーチエル・オンライン

オプラ・ウィンフリー

Oprah Winfrey (WENN.com)

この オプラ・ウィンフリーOprah Winfrey という黒人女性、日本人にはあまり馴染みがないが、アメリカではまず知らない人はいない。
彼女は『The Oprah Winfrey Show』(1986~2011)という大人気トーク番組の司会者だった。
著名なトーク番組の女性司会者、ということでほぼナイ!」では黒柳徹子・上沼恵美子お二方の名前を挙げたけど、オプラには日本の2人とは決定的に違う点がある。
それは海外の芸能人としては珍しくない、政治的・社会的発言を積極的に行う人物、ということだ。
誰が決めたか知らないけど、日本の芸能人が政治や社会問題について発言するのは、ほぼタブーと化している。
真面目に語っちゃいけないどころか、お笑いのネタにするのもタブーらしい。
間違ってちょっとでも口にすると、「芸能人のクセに」とかいうワケのわからないバッシングの対象になったりする。
しかもその芸能人より明らかに納税額の低いであろう連中にカラまれるのだ。理不尽極まりない。

オプラは日本人のワケのわからない難癖ややっかみの類とは無縁なので、堂々と政治的発言もするし、影響力もある。
事実、彼女はオバマの最初の大統領選の際に大々的に支援したことでも知られており、オバマ当選の功労者との声もあるほどだ。
その彼女がGGAで功労賞を受賞し、受賞スピーチをやったんだけど、このスピーチが凄かった。
何が凄かったって、ただの受賞スピーチじゃなかった。ほとんど選挙演説だった、と現地では大絶賛の嵐だった。
しかも、そこらへんの地方議員の選挙じゃなく、まるで大統領選のスピーチのようだ、と。

ってことで、GGA授賞式の直後から、複数のメディアで真剣に、オプラが民主党の次期大統領選候補になる、という声というか待望論みたいなものが急に出てきた。
彼女が大統領になれば、オバマが前例を作った黒人大統領になるばかりか、ヒラリーが果たせなかった米国初の女性大統領になる。
こんな話が出てきたのは、もちろん受賞スピーチが全てではなく、もともと政治家転身、みたいな話というか噂は出ていた。
アメリカの選挙は日本の選挙と違って、一回のスピーチで一気に選挙情勢を動かす、みたいなことは往々にして、アリなのだ。
それにしても、政治家でも何でもないヒトが、一気に大統領候補になる(なりそう?)とは、さすがアメリカ、夢があるというか何というか。
レーガン元大統領も、ハリウッド俳優から一気にカリフォルニア州知事→大統領だったけど、仮にオプラが次の選挙で勝っちゃったら、これ以上だ。
まぁ素人の女性が一気に有力馬になっちゃうんだから、民主党もどんだけヒトがいないのか、って気もするけど。

海外も「#MeToo」に肯定的なヒトばかりじゃない

オプラのスピーチが話題になった理由の一つが、まさに彼女自身が性的虐待を受けた過去を明らかにした点だ。
彼女も「#MeToo」だったワケだ。そして彼女以外にもGGA授賞式では、「#MeToo」の動きを後押しする女優たちのスピーチが多数あった。
まさに「#MeToo」一色の授賞式だったけど、一方でみんながみんな「#MeToo」に全面賛成、って感じでもない。
特に話題になったのが、フランスのベテラン女優 カトリーヌ・ドヌーヴCatherine Deneuve の “
魔女狩りWITCH-HUNT” 発言。

カトリーヌ・ドヌーヴ

Catherine Deneuve (eiga.com)

カトリーヌ・ドヌーヴ、セクハラ被害を訴える「#MeToo」を「魔女狩り」と批判ハーパーズ バザー

「男に女を口説く権利はある」「皆で寄ってたかって一人の人をバッシングするのは偽善的にすら見える。好ましくない風潮。」
ドヌーヴの発言は大きな波紋を呼び、まぁ要するにバッシングの嵐。
もともとドヌーヴは性犯罪はダメ、と言っていたのだけど、結局謝罪に追い込まれた。

カトリーヌ・ドヌーヴが性暴力被害者に謝罪 「セクハラ告発非難」声明と署名でハフポスト

ほぼナイ!」では彼女が発言を撤回した、と言ったけど、実際は撤回はしてないようで「魔女狩り」については撤回していない。なのでこの部分は訂正。
結局、彼女は最初の意見を変えてない、とボクは理解している。

日本のメディアはそもそも土俵にも上がってない

ボクとしては、ドヌーヴを全面的に批判する気にはなれない。
「魔女狩り」という点については、理解できる。
ただ、多くの女性たちが「魔女狩り」的後押しなしに声を上げられたとは思わないので、そこは考慮されるべきだとは思う。
それだけ社会的に弱い立場に、女性たちは置かれてきたのだから。
いずれにせよ、批判覚悟で声を上げたのだろう、ドヌーヴにも一定の評価が与えられてしかるべきだ。

意見がどうであれ、#MeTooの支援者たちと、ドヌーヴのように懐疑的な声を上げる人たち、どちらもこの問題に真剣に取り組む姿勢は称賛に値する。
そして性暴力が悪であるということでは、両者の認識は一致している。
ドヌーヴと一緒に異議を唱えた人の中には、「レイプで”(性的に)感じる”ケースも…」とトンデモ発言もあったみたいだけど、まぁこれは論外として。

その一方で、わが日本(のメディア)はどうか。
セクハラや性暴力の是非以前に、議論の土俵にも上がってない。
日本の#MeTooのはじまりとなった、そしてほぼナイ!」で何度も取り上げてきた「詩織さん事件」について、メディアは黙殺を続け、多くの人は未だに事件の事すら知らない。
それどころか、メディアの中には「詩織さん事件」自体をなかったことにして、日本の#MeTooのきっかけは、その「詩織さん事件」後に社員時代のセクハラ体験を告白した元電通の「はあちゅう」さん、ということにしているようだ。
事件に対する対処の仕方が、いかにも日本的で、ホント嫌になる。
こんなことでは、日本のメディアからセクハラはなくならないし、問題を語る資格もない。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫