<例外なく全世界で廃止されます>
スタバのプラ製ストロー

スタバのプラ製ストロー(写真:ロイター)

世界最大級のコーヒーチェーン スターバックスで、2020年までに全世界の店舗で、顧客へのプラスティック製ストローの提供を中止すると同社が発表しました。

ヨーロッパを中心に大きな問題として注目を集めているものの一つに「マイクロプラスティックによる海洋汚染」があります。
1~5ミリ以下の非常に小さいプラスチック片であるマイクロプラスティックは、プラスティックの特質上、ゴミとして投棄された後に分解されないまま海に流れ着き、海洋生物や人間の健康を害する存在になっており、重大な国際的課題の一つとなっています。
今年のG7でも、EU各国がマイクロプラスティック汚染対策の国際合意(海洋プラスティック憲章:Ocean Plastics Charter)を提起しましたが、日米2ヵ国が合意を拒否するなど、政治の分野では問題解決が順調に進んでいるとは言えません。
一方で、世界の大手企業が続々と各社独自の対策を打ち出しつつあり、民間分野での対策の広がりがむしろ先行しています。

(以上 HEADLINE 2018.7.25)

< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.36):【 見逃し配信を視聴 (YouTube)】※配信時の不手際で映像が傾いており、大変見づらくなっております。>

『ココがヘン!ニッポンのニュース:スタバ、世界全店舗でプラ製ストロー廃止へ:問われる「脱・過剰包装」

<参考:NIKKEI STYLEスタバから消えるストロー 意外と短い繁栄の歴史

「動物モノ」に弱い?!ヨーロッパ社会

海を漂う海洋ゴミとカメ、エイ(PHOTOGRAPH BY JOHN JOHNSON / ONEBREATHPHOTO.COM)

6月に開催されたG7シャルルボワ・サミット(カナダ)で、サミット前から主要議題の一つとして大きな注目を集めていたのが「マイクロプラスティックによる海洋汚染」だった。
特に環境問題への意識が高いヨーロッパ各国の問題意識は高く、アメリカや日本なども含め、G7の全7ヵ国が一致して汚染対策の合意(=海洋プラスティック憲章の批准)ができるかが焦点だったけど、日米両国の反対で合意できなかったことは先月の「ほぼナイ!」で取り上げた通りだ。

ヨーロッパ諸国がなぜこの汚染問題に熱心なのかというと、もちろん汚染が相当深刻という事だけど、最大の理由はヨーロッパの人々が衝撃的な映像を目に「しちゃった」からじゃないかとボクは思っている。
その映像とは、土にも水にも分解されず残ったままになってしまうという性質を持つプラスティックのゴミが海に大量に廃棄され、思いっきり海を汚しまくっている映像もそうだけど、何よりヨーロッパの人々の心を動かした映像とは、廃棄されたマイクロプラスティックを誤飲し、苦しむ生物たちの姿だった。
何の罪もない動物が(人間の行為で)苦しむ姿、ヨーロッパの人々はコレにメチャクチャ弱い、とボクは思っている。
過去にもこの現象は繰り返されているけど、特に有名なのは湾岸戦争の直前に世界中のメディアが取り上げた海に流出した大量の原油に苦しむ水鳥。
この映像で多くの国が湾岸戦争における「イラク憎し、フセイン憎し」に傾き、その後のイラク戦争の流れが決まった、というエピソードは非常に有名だ。
実はこの水鳥の映像はアメリカの情報操作で、米軍に対する支援や支持をできるだけ多くの国から取り付けたい、という思惑で仕掛けられたことが明らかになっている。
しかし、同時にこのエピソードは、特にヨーロッパ社会の大多数は「(かわいそうな)動物モノ」に極めて弱いことも証明してしまうことになった。

どうやら今回の映像はそういった情報操作の類ではなく(そもそも操作する意味がない可能性が高い)、多くの国が焼却処分しきれない大量のプラスチックごみを廃棄→海に堆積→海を汚染し海洋生物が誤飲、というのが事実であることは、多くの専門家も認めており、科学的にも根拠のある深刻な問題、というのは間違いないようだ。
かわいそうな動物たちはもちろん、我々の口にする水産資源を守る意味でも、早期に解決すべき問題、というのは世界の共通認識になっている。

「日本の環境保護意識は高い」はホント?!

日本の環境保護技術は世界的に高い、とか、日本人の環境保護意識は高い、とか、多くの日本人は日本が環境先進国だ、と信じて疑わないヒトが多い気がする。
ついでに言うと、お隣の中国は世界有数の環境後進国で国民の環境保護意識も低く、大気汚染など日本に迷惑をかけている、というのも半ば“常識”になっているようだ。
別に、こういったことが全てウソだ、とは言わないし、少なからず正しい面もあるけど、全面的に正しいかと言えばそれは相当怪しい。
既に先月の「ほぼナイ!」でも話題にしたとおり、先日のG7で日米両国が、残りの5ヵ国でせっかく合意していた「Ocean Plastics Charter海洋プラスティック憲章」に反対し、署名しなかったことで、日本は環境問題に後ろ向きだという批判が世界中で巻き起こっている。

あくまでもボクの印象で言うと、アメリカ(というかトランプ政権)は以前のパリ協定破棄で環境問題に後ろ向き、という国際的な評価が固まっていて、まぁ早い話が「諦められて」いる。
トランプには何を言っても無駄だ、アイツが大統領で居る限り環境問題でアメリカは全く期待できない、と思われているのだ。
なので今回、そのアメリカとツルんで合意をひっくり返した日本に対する失望と、そこからくる批判は、実はアメリカ以上に大きい。

そうした環境問題にまつわる日本批判の中で、ボクもこれまで意識していなかったコトがネット上で盛り上がっていた。
以下は、自称(ネットの書き込みなので検証は不可)在日外国人の投稿。日本で日常的に遭遇する Crazy なエピソードを披露する、として。
Go to a bakery, buy a couple types of bread, they will wrap each piece of bread in individual single use plastic bags, then put those bags into a bigger bag.
 Same thing when shopping at grocery store. Buy some ingredients to cook, and a tube toothpaste, that toothpaste will be placed in a separate plastic bag.
パン屋に行って違う種類のパンを買ったら、それぞれパンをプラスティックの袋(多分食品によく使われる、透明で薄手で保管時はロール状の、アレ)に入れて、それを更にデッカイ袋に入れて渡された、らしい。多分ホントに体験したハナシだろう。良く遭遇する風景だ。
それとスーパーで食べ物と一緒にチューブ入りの歯磨き粉を買ったら、歯磨き粉はこれまた例の透明のアレに単独で入れられ、食べ物(例えばプラスティックのケースに入った総菜)はこれまた別の透明のアレにくるまれるよ、とこの「ガイジン」は警告している。多分この「ガイジン」の読みは正しい。ほぼすべての日本のスーパーは、こういう対応をしている筈だ。

何が言いたいのかというと、日本で当たり前に遭遇するこうした風景が、海外の人にとっては Crazy なのだ。
でなきゃ、ボクたち日本人からすると、クソ面白くもない日常の話をわざわざネットに投稿したりしない。
このエピソードは、G7での日本政府の振る舞いを批判し、日本の環境問題の意識の低さをディスる中で披露されたモノだ。
そう、これは淡々と日本の日常を綴ったエッセイ、なんかじゃなく、明確に「日本人馬鹿じゃねーの、地球をこれ以上壊すな!」と言われてるのだ。

なにが Crazy かわかりますか?
乾いたパンをわざわざプラスティック製の袋に入れる(しかも1個1個)のは、単なるプラスティックの無駄遣いで、海外では Crazy なんです。
「いやいや、こっちのパンはゴマがかかってるけど、こっちはかかってないんで」という説明は、海外では何の言い訳にもならない。
万が一、家に帰ってゴマが別のパンについてたら、軽くはらって(或いは気にせずそのまま)、とっとと喰えよ、ってことで見事解決。
日本の過剰包装は以前からよく指摘されてるけど、パンのこれは、少なくともボクは、この投稿で初めて気づいた。
因みに、この投稿を読んだ数日後、ボクはあるパン屋で小さいクロワッサンを3個買った。
もちろん種類も同じ、ただのシンプルなクロワッサン3つ。
会計の際、ボクは目を離してたので気付かなかったけど、店を出て買ったパンの入った袋を見たら、なんと同じクロワッサン3つは、それぞれ別の、例の透明のアレに入れられていた 😥
ご丁寧に1個ずつ。心を込めて、かどうかはわかんないけど。少なくともそのパン屋のレジの女性は愛想がよく、ちょっと可愛かった、気がする。まぁ、それはともかく。
同じクロワッサンを1個1個、別の袋に…入れるってのは、普通なんでしょうか?
普段あんまりクロワッサン買わないから、日本のクロワッサンの流通事情には疎いんですけど。

このように、海外では決して日本人は環境問題に敏感で前向き、なんて評価ばかりじゃない。
少なくとも、この過剰包装の問題は、実際に環境負荷がどれだけ高いか、という問題以上に、今後の日本批判の象徴にされる可能性は高い。
さっき取り上げなかったけど、歯磨き粉の件は、以前からボクも Crazy ってのは感じてた。
だって、歯磨き粉はきっちりチューブで包装されて、何ならそのチューブが紙製の小箱に入ってたりする。
それをこれも包装された食品と一緒にして、何の衛生上の問題もない筈だ。例の透明のアレ、全く要らないでしょ。

過剰包装=電博の陰謀「説」

それにしてもこうした日常生活における意識の改善、なかなか根深そうだ。
だけど、こうした過剰包装に代表される日本人の意識、海外から見ると文字通り Crazy にしか見えないけど、コレが日本社会の繊細さの象徴だ、技術立国を支えている、悪い面ばかりじゃない、という反論も聞こえてきそうだ。
けど、ホントにそうか?

今回はたまたまネットで目にした、食品に対する過剰包装の例を取り上げたけど、包装以外にもプラスティックを大量に消費する事例はたくさんある。
ニュースの本題である、プラスティック製ストローもそうだし、それ以外にも使い捨てられるプラスティック製品は多い。
更にプラスティック製品以外にも、ごみ減量や資源節約の観点からいえば、あらゆるものをなるべく使い捨てず、再利用するという意識は当然重要になってくる。
こうした意識の障害になるのが、以前の「ほぼナイ!」でも言ったと思うけど、除菌・抗菌グッズに代表される「清潔神話」だ。
何かといえば「除菌・抗菌」を善として、清潔=絶対正義と言わんばかりに振舞う世の中は、決して昔からあったワケじゃない。
もちろん、昔は清潔なんて言ってる余裕がないくらい日本が貧乏だった、という事もあるけど、一方で過剰な「除菌・抗菌」は、通常の空気中にもたくさんある菌に対する免疫力を低下させるという意味で、医学的に良くない、という事も事実だ。
何事も「やりすぎ」は良くない。
では、どのレベルが最も適切な清潔具合なのか、という最も重要な情報は、通常ほとんど知らされていないと思う。
今の日本社会は明らかに、過剰な資源消費になっているし、医学的にも適切とは言えない方向に行ってしまっている。

こうした世の中の流れは、地道なメディアの「啓蒙」によるものだ。
特にテレビを中心に、事あるごとに「除菌・抗菌」を(陰に陽に)訴えるCMや番組はあふれ、例えばかつては(貧乏に強制されたとはいえ)当たり前に行われていた、他人とモノを共有したり、洗って再利用したり、更には修理してでも長く使うという古くから続いてきた「美徳」は、使い捨て(大量消費)、菌を徹底的に排除する世の中の傾向に、ほぼ完全に淘汰されてしまったように見える。

これが全て電博と呼ばれる広告代理店のメディア戦略によるもの、というのはあくまでボクの「説」なので、これが100%正しい、と言い切れないかもしれないけど、結果的に多くのスポンサーの利益や売り上げには今のところ不利な、反「清潔神話」や反「大量消費」を今のメディアで大々的に広めることは相当ハードルが高い気がする。
更に言うと、「清潔神話」も結局「大量消費」を促すためのメディア戦略じゃないか、と疑ってみると、かなり納得がいく点が多い、というのも事実だ。

本気で環境問題に取り組む気があるなら、今のメディアの相当な軌道修正が必要なんじゃないか、とボクは思う。

イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫