あのNYTまで批判の対象、環境問題と日本の「ガラパゴス」:「環境先進国ニッポン」w(2019.6.26配信分レビュー:その2)
ー ほぼナイ! HEAD LINE ー
<NYタイムズ紙の認識の甘さに抗議です>
リベラルな論調で知られるNewYorkタイムズ紙(以下NYT)の本社ビル前で、同社の気候変動問題に関する報道を評価しつつも、「まだ手ぬるい」と抗議するデモが現地時間の22日に発生、66人の逮捕者が出ました。。
米国の政治では親民主党・反共和党の姿勢を明確に打ち出す他、環境問題についても地球環境保護優先と経済至上主義に疑問を呈するなど、いわゆる「リベラル」色の強いことで知られるNYT。
しかし、そんなNYTですら、地球温暖化や気候変動についての報道は量も質も不足しており、利益優先の観点から急激な環境保護の姿勢を打ち出せていない経済界への配慮が見られるとして、環境保護団体のメンバーなどが米ニューヨークのNYT本社ビル前に集結、更なる気候変動問題へのコミットを求めて、激しい抗議の声を上げました。
NYTは「我々は気候変動問題をどのメディアよりも深刻に捉えており、その報道量も他のどのメディアより多い」とのコメントを発表し、反論しています。
(以上 HEADLINE 2019.6.26)
< ほぼナイ! レビュー動画(Vol.46):【 見逃し配信を視聴 (YouTube) 】> ※配信時に不具合発生の為、後半部分が録画できておりません。
『ココがヘン!ニッポンのニュース:あのNYTまで批判の対象、環境問題と日本の「ガラパゴス」:「環境先進国ニッポン」w』
<参考:CNN.co.jp> 気候変動の報道に抗議のデモ、逮捕者66人 NYTビル前
「あの」アメリカですら気候変動問題に危機感
地球温暖化は本当か。そしてそれは人間のせいか。世界的にはほぼ結論が出ているこの問いにも、未だに異議を唱える人はいる。
その象徴的な一人は、あのトランプ大統領。
いわく「地球の温暖化は周期的なものであって、人為的なものではない」「温暖化ガスの排出制限は必要ない」「フェイクニュースだ」
他にも、むしろ長いスパンで見ると地球にとっての課題は寒冷化だ、といった、地球温暖化を真っ向から否定する専門家も、わずかながら、いる。
しかし、そんな「温暖化論争」を横目に、「異常気象」と言われる、摂氏40度を超す猛暑が世界各地で相次ぐほか、豪雨からの水害の発生など、年々深刻さを増す気候の変化は、素人の素朴な感覚としては、地球の温暖化は真実であると疑わざるを得ない状況になってきている。
近年の急激な気候変動は、もはや大きな政治課題になっていて、6/28~29に行われたG20大阪サミットでも、最大の焦点の一つは間違いなく、環境問題で抜本的な取り組みに世界的な合意ができるか、だった。
そう、だった。残念なことに。まぁ、実際のところ、ボクは全く期待してなかったけど。
トランプ大統領が反「地球温暖化対策」の急先鋒になっちゃってる一方、以前の「ほぼナイ!」で言ったように、アメリカは特にトランプ大統領の登場以降、国が完全に分裂状態で、特に都市部を中心に、環境問題に熱心に取り組む人が多い。少なくとも、アメリカが環境問題に消極的で、その理由がトランプの存在、というのは完全に間違っている。
アメリカ人が環境問題に対してルーズだ、エネルギー問題への取り組みも大雑把で不熱心、というのも、確かに日本とは文化的な背景も違うし、そもそも国全体のエネルギーの量も違うので、一概には言い切れないけど、日本人がエラそうにアメリカ人を環境問題で批判できるような身分ではないことだけは、確かだ。
近年の相次ぐ自然災害の影響で、アメリカ人の環境に対する考え方は明らかに変わってきている。そして、本気になった彼らの行動力は、日本人の比ではない。やっぱアメリカは、いろんな意味で、スゴい。
因みに、国連のUNFCCC(United Nations Framework Convention on Climate Change:気候変動に関する国際連合枠組条約)では、「気候変動」という言葉は Climate Change と Climate Variability で明確に分けられている。
人為的な変化が Climate Change で、そうではない周期的な変化などの非人為的な変化を指すのが Climate Variability だ。
「環境先進国ニッポン」w
一方で我が日本。これも世の中一般に、誤解というか、誤った思い込みが拡がっているように思う。
まず、先程のアメリカに対するイメージが現実とズレている、というハナシで言うと、日本が環境問題先進国だ、以前から省エネ技術開発などに熱心に取り組み世界のトップランナーだ、というハナシ。
コレは、必ずしも間違ってないけど、まぁハッキリ言えば、過去の話。
事実、近年の国際会議では、アメリカ(というかトランプ政権)とツルんで国際合意に反対したり、環境問題に後ろ向きな姿勢を国際社会にさらしていて、批判を浴びまくっている。
という「事実」は日本のメディアでは、ほとんど報じられることはない。
こんな状況で、「あの」日本が議長国を務めるG20で、革新的な環境問題への取り組みが合意に至るようなことは、まずもって考えられなかった。
ボクが事前に期待してなかったのは、そのため。
国際会議では、何をどう話し合うかは議長(国)が決めるし、会議が成功するか、画期的な合意ができるか、はひとえに議長(国)にかかっている。
今回の議長は…あー、絶対にトランプをギリギリまで説得したり、いざとなったらアメリカを崖っぷちまで追い込んでヨーロッパと組んだり、といった荒業ができる…ワケないよね、あのヒトじゃ。
世界からは「トランプの愛玩犬」と揶揄されてる、あのヒト…。
日本が環境先進国、という「思い込み」の根拠になっているのは、70年代のオイルショックの影響から、石油資源の備蓄に乏しいという、日本のお家事情があった。
ないモノはつくればいい、という風にいければいいけど、石油はそう簡単につくれない。
そこで当時の日本がやったのは、「ないモノは極力使わない」という発想の転換だった。
各業界では省エネ技術やリサイクル技術が相次いで開発され、オイルショックという大ピンチを乗り切った。
この時の蓄積がきいて、日本は環境先進国の座に一時は着いた。
だけど、その後の大ピンチ、地球温暖化に対して、日本はかつてのような先進的な取り組みを打ち出すことはできず、ただただ当時の「貯金」を取り崩す事しかできなかった。
エネルギー問題一つとっても、日本は原子力発電に固執、風力や地熱、太陽光といった自然エネルギー発電の分野で、完全に後れを取った。
それどころか、原子力を普及するためにあえてその他の自然エネルギー利用を阻害する仕組みを次々と繰り出し、見事に世界の自然エネ競争を逆走、その行き着いた先が3.11の福島でした、というのでは、笑うに笑えない。
あれほど一部の反中勢力を中心に、環境後進国だ、文化的に遅れていて、ゴミ問題も大気汚染も解決できない、とバカにし続けてきた中国に見事に太陽光の分野でははるかに置いて行かれているし、ゴミ問題ですら抜本的な解決策が見いだせない日本に対し、国が(国民の権利を踏みにじるような)大胆な方策を次々に繰り出している。
環境問題で日本が中国に抜かれるのは時間の問題かもしれない。経済がそうだったように。
結局カギを握るのは、企業、そして…
環境問題と言えば、最近では紙製のストローやレジ袋の廃止などが話題になってるけど、残念なことにこれらの取り組みは、はっきり言えば「焼け石に水」でしかなく「やらないよりマシ」のレベルでしかない取り組みだ。
それは、近年問題になっているプラスチックごみの総量に占めるストローやレジ袋の量の少なさを考えれば、誰が見たって明らかだ。
だからと言って、意味がない、ハイ終わり、というのも違う。環境問題に消極的な勢力からよく出される問題提起だけど、だったら、これこそ対案を出せ、である。
そして対案は、実はある。特に日本では。それはズバリ「過剰包装の廃止」「(つくられた)ケッペキ症からの脱却」だ。
以前の「ほぼナイ!」でも、過剰包装の問題や「電博の陰謀説」と題して、企業の経済優先と環境軽視の姿勢を先導する広告代理店の活動を取り上げた。
いくら一般の消費者が環境問題にコミットしても、それを上回る勢いで企業が地球環境にマイナスとなる経営戦略を続けていては意味がない。
そして、こうした問題を積極的に取り上げ、スポンサーである企業の猛省を促すのが、報道メディアの役割であるハズだけど、日本のメディアはこの面でも完全に消極的、どころか堂々と逆走している。
スポンサー批判なんて、海外のメディアでは当たり前だけど、日本のメディアは「スポンサーは神様です」と公言して開き直る始末だ。
日本の夜明けは、遠い。
イサ&バイリン出版 解説兼論説委員 合田治夫