<名物報道官に更迭の噂です>
Spicer報道官

Spicer報道官

米トランプ大統領が、様々な批判が集中しているSean Michael Spicer報道官の更迭を検討していると、複数の現地メディアが伝えています。

Spicer氏はトランプ政権の発足当初からホワイトハウス報道官White House Press Secretaryとして、米メディア取材陣の矢面に立ち、トランプ大統領の発言のブレやSpicer氏などを指摘する厳しい追及を受け続けており、氏の大統領就任式についての「明らかな虚偽発言」がきっかけで、「もう一つの事実Alternative facts という流行語が生まれるなど、迷走するトランプ政権の象徴と言われています。

(以上 HEADLINE 2017.06.28)


『ココがヘン!ニッポンのニュース:一連のトランプ報道に見るメディア間の報道格差』

<参考:Japan In-depth> トランプ報道に一石投じた日経

Trump大統領

Trump大統領

ほぼナイ!」開始当初(一昨年の5月)からほぼ毎回、つまり就任前から常に話題にしてきたのが、ドナルド・トランプ氏。
異色のアメリカ大統領候補として現地メディアを賑わせ続けた彼は、一貫して「イロモノ」扱いされ続け、下品で暴言・失言を繰り返し、およそ大統領の器ではないし、最後は米国民の良識によって敗れ去る=大統領にはならない、と指摘され続けてきた。
一方、日本の報道メディアは、大体CNNやNew York Timesといった主要メディアの情報をほぼそのまま現地の情報として流すケースが多く、専門家と呼ばれる人々の大多数も、そのような報道の流れに逆らわない、予定調和を尊重する傾向にあるので、結局はアメリカの主要メディアと同じ論調で情報が流されることになった。

 

ほぼナイ!」配信を観たらわかる通り、ボクは一貫して、トランプ勝利の可能性を言い続けてきた。ただし、『ほとんどの現地メディアは「トランプは負ける」と言ってる』、というエクスキューズも忘れずに。

現地メディアの「トランプ叩き」は、彼が当選し半年を超えても変わらない。通常、新大統領(だけじゃなく他の政治家もそうで、これはほぼ世界共通)に対しては「最初の100日First 100 Days」と呼ばれる猶予期間があり、就任後100日間は温かく見守りましょう(そして、その後はバンバン批判しましょう)、というのが暗黙のルールとなっている。これは理にかなっていて、就任していきなり結果を出せと言っても、それは無理だろう。
ところがトランプの場合、100日どころか就任前からメディアに叩かれ続けてきており、First 100 Days どころか First 100 Seconds くらいで異常なまでの集中砲火は再開することになった。この100秒も、猶予期間、なんてものではなく、単に(トランプが勝ったという)現実を受け入れられずに思考停止に陥ってフリーズしてしまっていただけ、というのが真相だろう。

さて、Spicer報道官だが、やはりというべきか、彼はその後報道官を辞任した。就任当初から、彼はトランプ同様、格好のメディアの餌食だった。彼の発するコメントは次々と矛盾点を指摘され、批判の矢面に立たされた。
そして遂に耐えかねたか、彼はある日、予定の記者会見当日に予定時間を過ぎても会見場所(ホワイトハウスの庭)に現れず、会見に集まった記者達の背後にあった垣根に身を隠し、様子を見守る、という小学生顔負けのの奇行というか愚行に打って出たらしい。しかも、その姿を結局は記者たちに見つかる、というオチまでつけて。
このあまりにもオイシすぎるエピソードは、当然格好のネタにされた。報道番組はもちろん、お笑い番組ではSpicerネタが炸裂、マネをする芸人が続出した。
そりゃそうだ。天下のホワイトハウス報道官Press Secretary がホワイトハウスの垣根で擬態ごっこ、なんて面白すぎる。庭の茂みに同化しようとしたのだろうか。
豊田某の「このハゲ~!」「ち~がう~だろ~!ちがうだろ!!」以上かもしれない。
しかし、彼は気の毒な面もある。彼はあくまで報道官Press Secretary の立場で、ボス(トランプ)の代弁をしていたに過ぎないワケで、例えばボスがウソをついてるなら、当然彼もウソをつくことになる。まぁ、もちろん話はそんなに単純じゃないのだが。

と、ここまででトランプとメディアとの関係を一旦整理。

  1. アメリカの主要メディアは(就任前から)トランプを叩き続けており、
  2. にもかかわらずトランプは勝利し、大統領になったが、
  3. 就任前から問題視され続けているトランプの(下品な)言動は一向に改善されず、メディアとの対立はむしろ激化しており、
  4. そのトランプの対抗手段はこれまでの大統領が行ってきたようなを記者会見場での反論ではなく、ツイッターをはじめとしたSNSでの攻撃という前例のない振る舞いで、
  5. このことが更に現地メディアの怒りを買っている(ように見える)
  6. という状況を日本のメディアが、ほぼそのままダイレクトに流しており、現地メディア同様、日本のメディアも反トランプ色が強い。

と、とりあえずまとめてみた。これが普段我々が目にしているトランプ報道、というヤツだ。

それにしてもこの一連の構図、なんかヘンだ。
これほどまでに叩かれながら、トランプはなぜ勝利し、大統領になり、一応現時点では大統領で居続けられている(=いまだに一定の米国民に支持されている)のか?
そのヒントが、今回参考に挙げている古森義久氏の記事<トランプ報道に一石投じた日経>だ。実は現地アメリカでは、「ほぼナイ!」で何度も指摘しているように、トランプ支持層と反トランプ層が完全に割れており、トランプ支持層は強固で全く揺るがない。トランプがツイッター上でプロレスしようが、息子が戦闘機で暴れようが、報道官Press Secretary がホワイトハウスの庭で擬態化ごっこしようが、一切関係ないのだ。

このトランプ支持の強固さの真相は、前回7月の「ほぼナイ!」でも少し説明したので、別途そのレビューで更に詳しく説明する。
長くなるので、今回、一点だけ強調しておこう。それは<現地メディアと日本のメディアの差>だ。
明らかに反トランプに偏り、フェアとは思えない現地(米国)の主要メディアは、特にトランプ支持層からは完全に信頼を失っている。これは日本のマスコミがネット上などで「マスゴミ」と揶揄されているのに似ている。
だが、公平原則Fairness Doctrine に支配されている日本の報道メディアの場合、一応公平なフリをしないといけないので、自分のスタンスを(実際はバレバレでも表向きは)明らかにしない。とゆーか、我々は中立です、としか言わない。ここが米メディアとの決定的な違いだ。
では、米メディアは思いっきり偏ってるだけで、自分の信念をただただ垂れ流しているのか、というとそうではない。公平原則:Fairness Doctrine をあきらめたアメリカで報道の公平性を担保しているのは、報道・言論の多様性だ。
象徴的なのが、NYタイムズなど、世界各国のメディアで採用されているオプエド、オプイド:Op-ed だ。これは、新聞の社説欄などで自社の考えを表明しているその同じ紙面で、ほぼ匹敵するだけの異論や反論(オプエド、オプイド)を紹介するしくみだ。つまり両論併記である。向こうのメディアはこれを必ずやる。
日本のメディアはこれをまずやらない。
それどころか、例えば事前の編集ができないテレビの生放送で異論を述べるコメンテーター等がたまに出てくると、次回からその人は出てこなくなる、などいうことはしょっちゅうある。

異論が認められないのは、メディアに限らず日本社会に共通する特徴かもしれない。
人と違うことを言うヤツは、「KY」とか言って仲間はずれにする。
よくないなぁ、そういうの。

イサ&バイリン出版解説兼論説委員 合田治夫